5/11のねこさん       文は田島薫



こっちへ来るのか来ないのか


先週、家人の両親のいた家のある長野のローカル駅のホームに家人といて、ホー

ムの外に前回いた乳牛柄のねこさんいないかな、ってフェンスのとこまでいって、

そばの家のあたりを目で探すと、軒の奥に茶色い別のねこさんが寝そべってた。

お、ねこだねこだ、どこどこあそこ、って、ちょっちょっ、って舌で合図すると、

こっちに気がついたんで、よ、ってふたりで手上げて、こっち来いよ、ってしつ

こく手招きしてると、ねこさん、やおら立ち上がってこっちへ歩き出したんで、

こっちは、期待してなかっただけにちょっとびっくりして固まってると、ねこさ

ん歩いて来ながら家の外のこっちのフェンスまで続く砂利に出てくる手前で右折、

数歩先にあるトタンが斜に低くく立て掛けてある下に入って行って後は、いくら

舌の合図を再開しても出て来なかった。


いやいや、ちょっと小雨が降りそ〜なんで、ここでちょっとひと休みすっかな、

ってくつろいでっと、おや、あっちでなんか言ってる2人組がいんね〜、だれか

ぼくの後ろにいんのかな、ってちょっとふり返って見ても、だれもいないし、そ

〜すっと、ぼくに言ってんのか、なんだろ〜ね〜、あり?ひょっとすっと、ぼく

の知ってる人たちでぼくになんかうんまいもんをくれる、って言うのかも、なん

だそ〜だったのか、はやく言ってよ〜、とととととと、そっちへ行くんだけど、

なんだか知り合いじゃなさそ〜だね、急にだまっちゃったし、このままあっち行

くのはやばいからここで戻ってもいんだけど、それじゃぼくが間違えたのがばれ

ちゃってかっくわり〜から、ここでこっちへ曲って、ぼくは最初からこっちへ行

きたかったんだから、って感じで、そ〜そ〜このせまっくるし〜とこが好きで。


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