2/16のねこさん       文は田島薫

いいとこのねこさん


先週の土曜の午後、家人と自転車で食料の買い出しの2軒めに行った帰り、なだら

かな上り坂の鋪道のわきの高級そうな造りの家のアプローチの階段の上に茶っぽい

小ぎれいなねこさんがおすわりしてた。手前には丈夫そうな鉄の門扉が閉っている。

われわれは自転車を止めながめたら、ねこさんの方もこっちをながめた。あまりき

ちんとしたねこさんに見えたもんで、われわれは、いつもの、ちょっちょっ、って

ような気楽な声かけは躊躇して、少していねいに、よ、って表情を変えない相手に

言って手を上げたりしてから、家人が自転車を下り、丈の低い門扉のそばまで近づ

こうとしたら、急にねこさん、びっくりしたように跳ねて奥へ走った。


いやいや、ぼくんちのこのきれいなここんとこ座って、外の道通る人なんかが、あ

ら、きれいな家とねこさんだこと、なんて言ってるの聞いてるのもわるい気分じゃ

ないんだよね、ぼくはきれい好きだし。ほら、まただれかが向こうから来たよーだ

ね、またほめんのかな、うるさいね〜、うすぎたない感じの2人組が来て止まって、

ん?なんだって?なんにも言わないで、笑ってこっち見てんね〜、なんか言うこと

あんじゃないの?え?よ、って?手上げてんね〜、ど〜ゆ〜意味なんだろ〜ね〜?

庶民、ってもんはいきなりでいけないね〜、ま、さいわい、ぼくんちには丈夫なと

びらが前にあっから、だれも入って来られないからだいじゃぶなんだけどね、お、

なんだなんだ、ひとりが、こっち来るぞ、ヤバイッ!ハハウエ〜!


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