11/9のねこさん       文は田島薫



黒とらこっちへ来る


かなり寒くなって来た先週末の午後、食料の買い出しに私ひとり自転車で出かけた途中

のねこよこちょう角の家。庭のテラス手前の縁台の上に黒とらがきょうはめずらしくこ

っち向いて座ってて黄とらの姿はなかった。一応、よ、お、とか私は声かけて見ると、

黒とら何を思ったのか、ぴょんと縁台から下りてこっちへ歩いて来る。お、こっち来る

か〜、ってじっと見てると、向こうもこっち見ながら歩いて来て、私に近い方へ曲って

からぴたりと止まって、そこのコンクリの踏み石の上でうずくまった。で、こっちを見

てるもんで、こっちもそっち見たりちょっと目をはずしてみたりしてると、黒とらの方

も目をはずして、またこっちを見たりはずしたりしてる。じゃ、つって立ち去るまねし

てふり返ってみると、黒とら、こっちを見てる。買い物済まして戻って来ると、黒とら

は縁台の上に戻ってていつものよ〜に向こう向きだった。


いやいや、きょうはさみーね〜、この台はちょっと暖っかいと思ってたけどそれほどで

もないね〜、センパイも出て来ないのかな〜きょうは、さて、じゃ、ぼくもきょうはう

ちへ帰えっかな〜、ど〜すっかな〜、お、急にだれかがぼくになんか言ってるぞ、お、

なんだなんだ、どーした、どした、あり?なんでぼくはそっちへ歩いていっちゃお〜と

してるのかな?やばい、すとっぴ!ぼーっとしてて、あぶないとこだった〜、なんだか

こんにゃろめが笑ってるもんだから、こっちもつられて、そっち行っちゃったじゃね〜

の、よく見りゃ、手にうんまいもん持っててそれをくれるとか、ってこともなさそ〜だ

し、手ぶらで呼んでぼくをつかまえてからぶんなぐろー、ってやつかもしんなかったの

に、おいおい、なんてちゅーとはんぱなさみーとこで座るはめんなっちゃたんだ。すぐ

台に戻んの見られんのもかっくわりーから、こんにゃろ帰えんの待。


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