思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセーはご自分のクセに気づいてはいるようです。



金持ちには…


たいていの新聞にはその日の運勢がでている。大吉、中吉、小吉、凶と書いてあるもの、

運勢を言葉で書いてあるものとさまざまである。

新聞をひらくと真っ先にその日の運勢をみる。とくべつ信心深いわけではないが、いい

ことが書いてあればその日はなんとなくはればれとする。

わがやの新聞には干支別にそれぞれの運勢というより格言のようなものが書いてある。

格言というものは少ない字数のなかに多彩な意味を持つのがおもしろい。

きょうの新聞には「金持ちは容易に金を使わず金銭を拝んで大富となる」とあった。

「大富」などとなじみのない言葉がでてくるのもいい。これはかんたんに解釈すると

「あいつは金持ちのくせにケチだね」「あたりまえよ、ケチだから金がたまるんだ」と

なるけど、本当はもっとふかい意味があるんだね。


仕事をやめたらお金というものは入ってこない。減るばかりである。そこで昨年一念発

起して買い物をしたレシートをできるだけあつめておいた。年があけてからそれを整理

しておどろいた。無駄遣いが多い。毎日のタバコ代はべつとしてじつにくだらないもの

を買っている。

老生もともと買い物だいすき人間である。街中を歩いていてこれぞというものをみつけ

ると身体中にアドレナリンがあふれ買わずにいられなくなる。もとより高額なものは買

わないが、あぶないのが100円ストアーとリサイクルショップである。

100円ストアーのプラケースは鬼門である。「あ、これがあれば整理がしやすい」と

買ってきてそのプラケースの整理にこまっている。リサイクルショップではジャンク箱

のなかに1000円以下でまだ十分に使えるデジカメや電気製品をみつけるとがまんが

できない。

というわけで自分の部屋にはそれらがゴロゴロしている。

もう一つ悪癖がある。喫茶店に入るのがすきだ。ちょっとした異空間でタバコを一服、

それがたまらなくすきだ。ドトールコーヒーといえど数をかさねればばかにならない。

もっとわるいことに気にいった本を買ったときは贅沢な空間で頁を繰たくなる。そうす

ると高級喫茶店で高いコーヒーをのむことになる。買った本が古本のばあいは本の代金

よりコーヒーのほうが高くなる。

実例をあげるときりがない。昨年はこうした無駄遣いが三分の一をこえていた。この現

象を「容易に金を使う」というのだろう。金持ちにはなれないわけである。今年は、す

こし「金銭を拝む」ことにしよう。


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