●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、新鮮な感覚を再発見したようです。



ジンジャーに魅入られる


「花が咲くとすごくいい匂いがするのよ」という触れ込みでお隣さんから分けてもらっ

たジンジャーが次々と花をつけ始めた。

シンプルなカトレアのような花で私の好きな真っ白な色。

早速2本を切り花にして部屋に活けてみると、その香りは甘すぎず、すっきりしていて

色に例えれば紫の入ったブルー系かも。何やら人の気持ちをふわふわと夢見心地にする

ような魅惑的でとても強い。

こちらは観賞用だけれど、ジンジャーというからには食用なら当然あの生姜なので、だ

からこれほど香りが強いのだろうか…

とにかく家中がジンジャーの香りが漂い、いつもと違う贅沢な時間が流れているようで

幸せ感いっぱいだ。

とにかくたった2本の花の存在感たるや圧倒的で、清楚な白でたおやかな風情なのにそ

の蠱惑的な香りで、「見て! 見て! 私はここよ! まさに生きているのよ、凄いで

しょ!」と叫んでいるかのようだ。そのしたたかな匂いゆえに、私はすっかりジンジャ

ーの魔法にかかってしまってしまい、今のところジンジャーのひたむきさが可愛いくて

仕方がない。いつもジンジャーのことで頭がいっぱいになってしまい、こんな一文を書

く始末。香り恐るべしだ。

いくら花が豪華でも目を閉じれば視界から消える。香りがあれば目を瞑っていてもその

存在は消えず、その香りゆえにイメージがいくらでも目に見えるように広がっていく。

最近文化的生活とは限りなく無臭に近い生活を指すようだけど、素敵な香りというのは

余裕であり、さらに贅沢で豊かなことなのではないか。

そういえば女性のおしゃれは最後は香水で仕上げるのだという。おしゃれの本場フラン

スではファッションとともに香水が発達したのもうなづける。


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