●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、時空交錯散歩をしたようです。



渋谷駅界隈


かねがねデュフィ展を観にいこうと思っていたのが、のびのびとなっていた。会期が7月

27日迄だったことを思い出して、慌てて25日に渋谷の文化村ミュージアムへ行った。

最近渋谷界隈へ足を踏み入れることはなかった。

なにしろ、東急線が地下5階に潜ってしまい、駅のレイアウトはまったく様変わりをして

迷路のようなのだ。

その日も、道玄坂下へ行くには東横線ホームの前寄りの出口から出ればいいと分かっては

いたが、つい目の前にエレベーターがあったので、まずこれで地上に出ようと横着をした

ら、西口に出てしまった。JRのガードを潜ってようやくランドマークビルの109を見つ

けたときホッとした。

以前、渋谷は東急沿線に住む私にとって便利な東京への玄関口だった。

東京の友人との待ち合わせ場所にしたり、食事をしたり、JRや地下鉄、近郊線への乗り換

えのための通過点だったりとかなり利用していたのに、今では時間のかかる面倒くさい駅

となってしまった。渋谷駅の乗降客ランキングが3位から5位に下がったというのも頷ける。

109ビル前のスクランブル交差点ではちょうど夏休みに入った折なので、遊びにきた10

代の女の子たちがぞろぞろと歩いていた。

彼女たちはお小遣いで買ったであろう服を精一杯コーディネートしている。可愛いらしい

ミニスカート、大きなロゴ入りTシャツ、慣れないヒール靴。きっと鏡の前でああでもな

い、こうでもないと服を選んだすえのファッションなのであろう。

そう、ここ渋谷は彼女たちのハレの場なのである。

ファッション店、レストラン、カラオケ店、ゲームセンター、遊ぶ所には事欠かない。ち

ょっと冒険して大人の気分を味わい、同じような若者が集まる中で自分もその中で同化し

たい、そんな気持ちでワクワクして歩いているのだ。

いつもの制服を脱いでちょっと不安な私服姿。目立ちたいけどあまり目立ってはいけない、

揺れる気持ち。私は懐かしいような歯がゆいような気持ちになって、大丈夫、ちゃんと可

愛いよ、あなたの年代は何を来ても美しいのだからと声をかけてあげたい。

文化村通りは緩やかな坂道に雑多な店が並び、店の出す音やら看板の色やらが溢れかえり、

一本も街路樹もない。“文化村”なんてダサいネーミング…などと思いながらミュージア

ムに着く頃には汗だくであった。

さて、お目当ての展覧会はかなり混んでいて垢抜けたファッションのおばさま方でいっぱ

いだった。


戻る