4/7のしゅちょう             文は田島薫

(思い込みの人々について


先日、警察による証拠ねつ造によると思われるえん罪で50年近く留置されてた袴田さ

んが保釈され、理化学界では理研の小保方さんが英科学誌ネイチャーに発表した、新

型万能細胞の論文中のキーポイント画像に過去の別件画像を使い回しされていたこと

が判明して問題になり、理研は論文撤回と不正認定をしたところ、小保方さん当人か

ら単純ミスであり、研究成果そのものに間違いがない不納得の主張があった。

このふたつは別々の話なんだけど、根っこに同じ問題をはらんでて、こういったこと

がけっこうわれわれの身近でもたびたび起ってる気がするので、ちょいと。

簡単に言うとどちらも、人の「思い込み」の暗黒が問題なので、ねつ造の方の問題は、

殺人放火事件が起きた後に、とりあえず一番怪しい人間が袴田さんしかいなくて、彼

が犯人だとすればすべてつじつまが合う、って当時の担当警察官たちが思い込んだ結

果だったのだ。彼が犯人だ、ってことは警察官たちだれもが直感でわかるんだけど、

それを主張するには決定的な証拠が足りない、じゃ、なんとかつじつま合うような細

工しちゃおうか、だって、犯人がわかってるのに、これから先途方もない労力をかけ

て調査するのは無駄なことだろう、って、税金だって無駄に使うことになるし、って

いった発想展開になって、その証拠ねつ造を正当化してしまったんだろう。

これは、よくありがちな長時間にわたる脅しや暴力、自白強要という、袴田さんの話

からも推測できる。だって、これは密室で弱い立場の人間からの告発なのだから信じ

るべきだろうし、もし、警察がそれを不当だというなら、いろいろ理由をつけるけど、

完全ビデオ記録と公開を阻むことはないはずなのだ。

もう一方の万能細胞の方も、同じように、その存在を信じてしまった小保方さん、そ

れを証明して納得させるためによりわかりやすい画像に変えちゃおう、って発想。

だもんで、批判があった時、証明はできてるから、正しい画像をネイチャーに送りな

おしてあるから問題ないはずだ、って言ったのだ。

一方理研責任者集団は、その画像不正などに強く反応し、当の小保方さんぬきで、そ

れまで彼女に丸投げしてたのに今度は手のひらを返したように小保方さんの主張には

ちっとも耳を貸さず、すべていい加減な研究成果だと決めつけて検証を始める、って。

これはどっちもこっちも、それぞれの思い込みだけでつっぱしってる結果的には実に

非効率な活動なんであって、これだとあまり妥当な成果は得られないだろう。

大事なのはより、勝手な感情が入り込まないきちんとしたチェック機関を持つシステ

ムであって、それを大事にしない集団はみんな同罪なのだ。

思い込みは人間ならだれにでもあることで、一番問題なのは、それを集団でつっぱし

っちゃうとこにあるのだ。

えん罪の方で言えば、証拠の矛盾がわかった時点でやり直しをする勇気をもった人物

の欠如。万能細胞の方なら、小保方さんの主張を彼女をまじえてきちんと検証しよう

とする客観性持った人物の欠如なのだ。


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