思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
センセーが、ふたついっぺんに大岡裁き(?)。



ふたつの不祥事


STAP細胞の存在の真偽がとわれている。

時間とともに研究論文のおそまつさが露呈してきた。科学というものは再現性が保障されな

ければその研究成果は認められない。論文にしたがって第三者が結果を証明できなければ正

しい研究とはいえない。ひとりの研究者の魔法でつくられただけではだめなのだ。

この研究者の在籍する理化学研究所は国費で運営され、世界が認めている巨大な研究機関で

ある。そこでこのような不祥事とは…、と揶揄するのはたやすいが、むかしその研究所に草

鞋をぬいだ者としては笑いごとではすまない。


1917年に純粋な民間の研究所として発足した理研は「科学者の楽園」という本に書かれ

たように、ユニークな研究環境のもと多くの世界的な研究者を輩出した。ところが研究成果

を商品として売り出し研究所運営資金をねん出するという方法が戦後の財閥解体にふれ、解

散させられてしまい、その後は国の独立法人として再発足した。

はじめのうちは伝統のままの研究環境であったが国の口出しがふえるにつれ楽園とはほどと

おい環境になってきた。そこで老生逃げ出した。

現理研では5年間で研究成果をださないと研究室が閉鎖されるという。むかしは一つの研究

が終了すると研究室が閉鎖されたことをおもうと研究環境に天地ほどの差がある。

今回の問題について野依理事長が「一人の未熟な研究者が膨大なデータを集め、取り扱いが

きわめてずさんだった。責任感が乏しかった」と言っているが、問題の責任は当の研究者に

あることはもちろんだが、「5年で結果を」という拙速な成果主義に原因があるのではない

か。一研究者の責任を問う前に国は研究所の運営方法を見直すべきだ。


もうひとつの不祥事は浦和レッズ。

「JAPANESE ONLY」の横断幕事件はどのような背景をもって掲げられたのかが

問題だ。浦和レッズのサポーターは、選手の乗ったバスを襲撃するなど元気がいい。ただ元

気がいいだけなら問題はないが、時節柄この横断幕は見逃せない。

Jリーグはこの行為を、FIFAの「反人種差別・差別に対する戦い」に歩調をあわせ「差

別的な行為」として浦和レッズに9種類ある制裁のうちの7番目、ホームゲームの「無観客

試合」を下した。

この無観客試合というものは、問題を起こしたチームにとっては仕方がないことだが相手の

チームはとんだトバッチリである。

この一見不公平にみえる連帯責任はJリーグの加入する上部団体FIFAが制定している制

度なのでそれに倣わなければならない。旧軍隊の専売特許だった連帯責任が生きているのも

不思議なことだ。

Jリーグがこのような特殊なルールのもとに運営されている以上、それに参加するサポータ

ーも大きな責任をおっていることを自覚しなければならない。

私情でいえば、「未熟なサポーター」への見せしめに、対戦相手の清水エスパルスのサポー

ターだけを入れて試合をすればいいと思う。そのとき「SHIMIZU ONLY」の横断

幕を掲げてね。


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