1/20のねこさん 文は田島薫
ひきこもりねこさん
土曜の遅い午後家人と図書館の手前の坂の鋪道を自転車で行くと、わきの小1メートルほ
どの高さの植え込みからくろねこさんがピョンッと鋪道に下りたんで、われわれは、お、
お、って騒ぐと、ねこさん、こっち見てびっくりして、またすぐに、もとの場所に飛び上
がって隠れてしまった。そばまで行ってふたりで、植え込みのぞきこむと、いたいた、っ
て、家人、どこ?って私、そこそこ、右んとこ、あ、ほんとだ、って、見ると、ねこさん
こっち見て固まってる。おい、おい、などと、言ってみるんだけど、ねこさん、石のよう
に固まったままなもんで、しばらくその石ねこさんをながめてから、私は坂を下り出して、
ふり返ると、家人はまだ飽きずながめてる模様。
いやいや、きょうみたいにさみ〜日はこのふかふかした場所がけっこうあったかくてい〜
んだよな、それに、こ〜奥にいれば、外からぼくの体は見えないようだから安心なんだ。
これがちょっと首でも出しててみたら、も〜大変なんだ、ここ通るこどもやおばさんが、
わ〜わ〜言って、無理やりあたまなでられたり、体ひっぱられたりで、ゆっくりくつろい
でらんないんだから、ったくも〜、なんで、ぼくをほっとけないのかな〜、ま〜、ぼくが
かあい〜、ってことらし〜んだけど、ま、ぼくがしらずに毛づくろいなんかしちゃうから
きれ〜んなっちゃって、それがよけいいけないのかもな〜、だったら、わざとこんどは、
毛づくろいはやめるは、体に、んこ、つけとくは、ってことにすっかな、さて、ここもそ
ろそろさむくなってきたから、あっちの方行くか、人に見つからないスキをねらって、ピ
ョンッ、って、あっ、見っかっちゃった。やばい。こ〜、かくれて、ぼくはも〜見えませ
んよ〜、見えてない、見えてない、さわると、んこ、がつきますよ〜。