●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
前例で安心して右へならえのなんとかのひとつおぼえ(?)。



シリーズ 街角ストーリー

ガス灯


山下公園の夜景にはどこか温かみがある。通りのガス灯が黄白色の柔らかな明かりで港の

夜を見事に演出している。

ガス灯は港・横浜のシンボルだ。

なぜならいち早くガス灯を取り入れたのは横浜だから。

ちなみに横浜は幕末の開港によりさまざまな外国文化がどっと流れこみ、さまざまな物や

事の発祥の地となった。例えば、電灯、公園、近代水道、洋風建築、ビール、あいすくり

ん、石鹸、パン、レストラン、理容などなど・・・

以前、横浜中心のミニコミ誌はこぞってよくこの横浜事始めの特集を組んだ。今ではあり

ふれた身近な物や事柄が、この横浜でこんな風に始まり発展したという記事は格好のネタ

で協賛店の広告が取りやすいのだった。

さて、中でもガス灯は、明治5年実業家の高島嘉右衛門が現在の桜木町駅から馬車道本町

通りに設置し、「文明開化の光」そのものである。

提灯からガス灯へ、さぞかし当時の人々は驚いたことだろう。

そのガス灯も電灯へそして今ではLEDへと中身は変わっていったが、姿形はそのまま愛さ

れている。

あの三角屋根に尻つぼみ四角形の形はなんともロマンチックで、港町にふさわしい雰囲気

をつくっている。

そのためなのか、猫も杓子も使われて、横浜の大抵の商店街の街灯といえばこのガス灯の

形のオンパレード。これでもか、これでもかと使われている。

さらに最近、横浜駅の西と東を結ぶメインの中央地下道の真ん中に二つのガス灯が設置さ

れた。きっと、東京駅の銀の鈴のように待ち合わせ場所の目印らしいのだが、急流を大き

な石でせき止めたようにただでも混雑している人の流れを混乱させている。

こうなると、ガス灯の風情もへったくれもない。


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