思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、ほとんどロシア人になって現地になじんでるようです。
露国赤毛布
5.サンクトペテルブルク
話しに聞いていたロシアの空港のボディーチェツクはきびしかった。靴を脱ぎ、ボールペ
ンをだし、ポケットのカメラの電池を出すまで三、四回やりなおしをさせられた。
ようやく搭乗となり久しぶりにロシア製の飛行機ツポレフに乗れると楽しみにしていたが、
残念ながらボーイングだった。飛行機は満席。隣はどんな人がくるかと思っていたら旅慣
れたようすの若いロシア美人が颯爽とやってきた。彼女はビジネスバッグひとつで席に座
るとすぐに本を読みはじめた。
離陸するとまもなくサンドウィツチとジュースの食事がでた。大師さまと、夕食を食べる
んじゃなかったといいながらパンの包みを開け始めると、となりの美人が「食べる?」と
いうそぶりでサンドウィツチをさしだしてきた。ふいをつかれたのでいいもわるいもなく
スパシーバと言わずにサンキューといって受けとってしまった。腹をへらした東洋人に見
えたのかな〜。
一時間半でサンクトペテルブルク着。出迎えのガイドは若い女性のアンナさん。モスクワ
のミハイール氏より日本語がうまい。バスの中でサンクトペテルブルクでの注意を聞く。
「私が言うとおかしいですがサンクトペテルブルクはスリの多い街なので気をつけてくだ
さい」と言ったときは皆で爆笑してしまった。30分ほどで着いたホテルはアメリカ資本
のホリデイインなので気が楽だ。モスクワのときとちがって立て続けに食事をしたので腹
具合もいい。時間は10時をすぎているのではやく風呂に入って寝ることにした。
−3℃の外気のなかで吸うタバコはうまい。旅も二日目になると仲間ができてくる。ホテ
ルは全館禁煙だ。タバコ仲間は結束がはやい。今朝のメンバーは三人。一人旅のHさんは
電車で10分ほどの所に住むご近所さんだった。実は今回の旅行は禁煙で通すつもりだっ
たがモスクワの空港の外にある灰皿でタバコを吸っていた彼のおかげで禁煙の誓いはもろ
くも潰えてしまった。もう一人のオバサンも一人旅で、モスクワの空港でタバコを吸って
いる二人をみつけ、「あっ、タバコが吸える!10時間も吸わないと気が変になる」とあ
いさつもせずにタバコを吸い始めた人だ。このHさんとは、旅の最後まで「タバコ吸うと
こあった?」が合言葉になるつきあいになった。
今日の午前中は自由行動。といっても市街地から5キロほどはなれたところにあるホテル
のまわりにはクリミア戦争のときの凱旋門があるだけで見るべきものはない。しかたがな
いのでホテルの隣にあるスーパーへでかけた。
ここは日本人旅行者のあいだでは有名な店で日用品からお土産までなんでもそろう。入っ
てみておどろいた。客の半分はツアー御一行様。オバサンたちはネットで調べてきたとか
でお土産用のチョコレートのほかにもソーセージやサラミなど加工食品も買いこんでいる。
オバサン達の情報力おそるべし。
まだ時間があまったので、グーグルの航空写真で調べておいた寺院らしきところへいって
みた。守衛所がある高い塀でかこまれた寺院は修道院のようであった。幸い日曜日だった
ので、にわか正教徒にばけてミサに向かう人々とともに中に入った。大きいが簡素な建物
の奥に聖堂があった。さすがに中に入るのは遠慮したがいっとき清楚な気持ちになった。
ホテルにもどると昼食一時間前。市街地にあるレストランへつれていってくれるそうだ。
今日はなにを食べさせてくれるのだろう。