●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの新シリーズ2回め。
シリーズ ファッション考
すさまじきは女の服への執念
伊太利屋ブランドってご存知だろうか? あのアニマルプリントをはじめラメやビーズなど
あしらった派手でケバいヤツ。
私は一時その服にハマっていた。
というのは、伊太利屋の仕事をしている友人がいて、年に2回そのバーゲンに招待されたか
ら。通常の値段の半額以下というのは抗しがたい。
バーゲンセールは年に2回、平和島にある流通センターを貸し切って催された。
その日は、友達の友達など5〜6人かき集めて誰かが出した車に乗って意気揚々と繰り出す。
着いた会場ではすでに殆ど女性ばかりの長蛇の列。そして10時の開場とともに鼻息も荒く
どっとなだれこむ。その様子はさながら今でいえば元日のデパートの福袋を求める光景か。
体育館のように広い場所に彩り鮮やかな服がびっしり、取り巻く客もびっしり。中にはぶん
どり合戦のようなこともあるけれど、鏡を置いていないので、他人同志なのに「どう? 似
合ってる?」と服をあてて聞いてくる友好関係もある。
私は普段“洋服はありふれているけれどよく見るとちょっと変わっている”がコンセプトな
のだが、すっかり雰囲気に呑まれ、茫然自失。
朱に染まれば赤くなる、の喩えどおり、地味目のものを選んだつもりが、気がつくとド派手
でとても着られない物をつかんでいる。
2時間ぐらい迷いに迷って4〜5点を選ぶと、思い思いに散らばったみんなが待ち合わせる
場所に集合。そして皆一仕事終えた熱気と興奮の余勢を駆ってレストランに突入し、ランチ
を食べてようやく落ち着いたところで帰途につく。
さて、そこからがまたお楽しみ。グループの中でダンナが留守の家に集まり、戦利品を披露
するファッションショーを開くのだ。
これ、どう? とか、これ、やっぱり似合わないから誰か引き取らない? とか、それとこ
れと交換しよう、とか、女心の服に対する執念はとどまることを知らない。
そうやって、日がな1日服まみれになって楽しんだ良き思い出。時はまさにバブル経済華や
かなりし頃だった。