3/11のねこさん 文は田島薫
新人が通り過ぎる
先週末だったか晴れた午後、2階の居間にいた家人が今ねこさんが道を向こうへ歩い
てったよ、って言う。ねこさんのひとりが道を歩いてくのがそんなにめずらしいのか、
ってちょっと思うんだけど、このごろはけっこうこのあたりではそうなのだ。
ここで見のがしちゃいかん、これ見のがすと今度いつねこさんに会えるかわかんない、
第一ねこ日記が書けない、って慌てて、サンダルつっかけてって外へでた。
道路出てみるとねこさんの姿はない、さては曲ったな、って先の左へ入る突き当たり
が家の袋小路のとこまで来てそっち見ると案の定、白地の背中にダークグレイのだ円
つけたねこさんの歩く後ろ姿。おーい、って声かけてみるとふり返ってこっちを無表
情で見てて、しばらくしたら前向き、それからは一度もふり返らず何事もなかったよ
うに、つきあたりの家の鉄さくをくぐって行き見えなくなった。
や〜、静かでいいとこだねここは、初めて来たけど散歩に最高、こ〜、かすかに木や
草のにおいが風に乗って来る中を、ぼくひとりがのんびり歩いてくしゃーわせ。お、
あっちにもっと木がいぱいあるから、行ってみっか。こ〜、のんびり木の葉がゆれる
音なんかに耳すませながら歩いてく、つってるそばから、なんだか不愉快な声がした
ね〜うしろから、ん〜ん、へんなのがこっち見て笑ってるね〜、う〜、しっしっ、こ
らっ、だりだきみは、ぼくのしゃーわせな散歩のじゃますんのは、なんかよ〜なの?
言ってみなさい、場合によっちゃ、聞いてあげないこともない、でも、忙しいんで、
ねこのてをかりたい、って言うのはおことわりだかんね、ぼくははたらくのがだいっ
きらいなんだから、ん?用じゃない?なんだ、ただのひやかしかい。