思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
歌舞伎通シャンせんせい、残念な思いの立春です。



立春大吉



ほんに今夜は節分か…

歌舞伎「三人吉三」のなかのセリフである。

季節はほっておいてもやってくる。

子供じみた習慣かもしれないが、身についたものはやらないと気持ちが悪い。

今年も「ニーハオの豆なんかまいて春がくるものか」と息巻くおじさんの乾物屋で豆を買った。


豆まきをすませ、ひと息ついたところに歌舞伎役者市川団十郎の訃が知らされた。

彼は歌舞伎界の名門市川宗家の御曹司として生まれたが早くに父親を亡くした。父団十郎は、

姿のよさとセリフのよさで歌舞伎ファンばかりではなく一般の女性にも人気があった。それと

正反対の芸風をもつ彼は、どんな名門に生まれても後ろ盾がなくてはただの人という歌舞伎界

で宗家の芸を守るためにたいへんな苦労をした。

その芸風は好きではなかったが、芸の大きさと真面目なところは一目おくところがあった。隙

あらば人の足をひっぱろうという芸界にあって努力に努力を重ねて家の芸を守った。

人柄をいえば、息子海老蔵の不祥事にあたっての姿勢はとてもまねのできるものではない。

団十郎は、その人柄と努力により多くのファンをつくり、世襲の義務を立派になしとげ、舞台

の重しとしてなくてはならない役者になった。

昨年暮れには芸の役者勘三郎をうしない、こんどは貫禄の役者、団十郎を失ってしまった。と

んだ立春大吉であった。


世襲といえば政治屋さんのほうにも二代目、三代目、四代目がごろごろしている。

その中に親の仕事を上回った人間がいるだろうか。いずれも親の威光にしがみつくだけで仕事

はどんどん小さくなっている。彼らとてポンとでてきたわけではない。国民に選ばれて出てき

たのだ。ということは国民の目は歌舞伎ファンよりくもっているということか。

今日も二世議員である国交省政務官が女でしくじって職を投げ出した。

こちらの方も、なかなか立春大吉とはいかないようだ。


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