思いつくまま、気の向くまま
  文と写真は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、うまい買い物でした。



ニシンの子



昔、サンマとニシンは大衆魚であった。

ところがニシンは、漁獲量の減少から偉くなってしまった。

とり残されたサンマは、『あはれ秋風よ…… 男ありて 今日の夕餉にひとりさんまを食

いて思いにふける と……』と、佐藤春夫の「秋刀魚の歌」に格調高くうたわれているが、

かたやニシンは、「ソーラン節」か『かっちゃん数の子にしんの子……』と民謡かはやし

歌にしかうたわれない。

しかし、ニシンは「春告魚」とも書き、俳句の季語になっているからこの勝負おあいこか。


近所にある東北の水産会社の出店で、とびきり生きのいいニシンをみつけた。

まだ荷をおろしたばかりで値段がついてない。

そばにいたお兄さんに聞くと、「ちょっと待って」といいながら目方を計った。

値段はそれほど高くはないが、大き目のアジ二尾が買える値段だった。


二尾もらうと言ってからのやりとりがおもしろかった。

「どれにします」

「なるべく入っているやつ」

「なにが」

「ほら、数の子とか白子とかいうじゃない」

「どちらにします」

「そとからみてわかるの?」

「わからないですよ」

「????」

「それじゃ大きいやつを」

といってお兄さんが選んでくれたのは、どちらも数の子だった。


この話し、ココ通で使えると思って食べるまえにあわてて写真を撮った。


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