思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせいご一党、すぐにビールの肴をみつけました。



なんの因果で

「おや、しばらく。ときに親御さんは元気かね」

「へい、元気です。なんの因果か丈夫で」

「バカ野郎!親のことを因果というやつがあるか」

なんの因果か丈夫で、という言葉は落語でよくつかわれる。

ここでつかわれる「因果」は、仏典にある因果応報そのままではない。


Jリーグ鹿島アントラーズが負けたらココ通休載ときめたのは前に書いたとおり。

どうせ今週も負けるだろうから楽ができると思っていたら、なんの因果か勝ってしまった。

おかげであわてて書くはめになってしまった。


暑さも少しやわらいだので気の置けない仲間とビアホールで暑気払いをしました。

ワイシャツに黒の蝶ネクタイとズボンという制服姿のウエィターが忙しく立ち回る中、赤

の制服を着た本当の紅一点のウェイトレスが、のそっと立っているのです。

注文をするお客さんをみつけても近くのウエィターに知らせるだけで自分から動きません。

その行動は横着というものでもなさそうです。

ウエィターが手一杯なのでその娘を手招きして注文をしたところカウンターにもどってマ

スターに耳打ちをします。そのあとウエィターがとんでくるというわけです。

新米であることはわかるのですが、おびえるでもなく、ふてくされるでもない態度はちょ

っと不思議な存在です。

たちまち口の悪いメンバーの物語がはじまります。

「なにあの子、集団就職で出てきたのかしら」

「いまどき集団就職なんてあるものか。きっと親戚からあずかったわけありの娘なんだよ」

「いまどきこういう店にはあんな子しか来ないのかな」

「格があるので有名な店だからそんなことはないよ。きっとわけがある」

「そうそう、どこかにみどころがあって一人前の看板娘に仕立て上げようとか…」

「なにもしないで店の動きを見ていなさい、とね」

「でも、憎めない子よね。悪びれたところがないし」

「うん、あの一生懸命に立っているところはかわいいね」

「のそっと立っているところがなんとも言えない」


まだまだお話しはつづくのですが、ここで頭領格の小生が、「それじゃ、あの娘の成長を

見守る会として毎月一回飲みにこよう」と提案すると、全員即座に「そうしよう」。

なんの因果か小生のまわりにはこんなへんてこなやつが集まってくるのです。


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