●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんは、日々宇宙のスペクタルを楽しんでるようです。
見上げてごらん、空を
私は空を見るのが大好きだ。
空を見ているとその美しさに、癒し、雄大、憧れ、畏れなどを感じる。
小さい頃からよく病気をしたが、臥せっているとき窓から晴れた空が見えれば慰められて、
この輝く光がある限り生きていかれる、と思った。
特に夏の空は真っ青で、ぎらぎらと注いでくる光の束が強烈で、一瞬目がくらみ思考も止
まってしまうのだが、次の瞬間はこの世の悩ましきことすべてがどうでもよくなり、ただ
浮き浮きと囃し立てられて希望の光となってしまう不思議な力があるのだ。
空にところどころ雲があるときはなお嬉しい。刻々と変わる雲の形や流れていく雲を見て
いるのは飽きない。このときの空は想像をふくらませる巨大なスクリーンでありキャンバ
スでもある。
綿雲、ヒコーキ雲、すじ雲、いわし雲、入道雲など雲の種類もたくさんあるが、その素朴
なネーミングは直感的で誰にでもわかる親しみやすいのもいい。
さらによく晴れた日の夕焼け空を見逃してはならない。息をのむほど美しく平凡な一日の
フィナーレを華やかに飾ってくれる。
暑い、暑いといっているうちにようやく秋の気配が漂うよう今日この頃、
空を見上げると、相変わらず熱を孕んだ暑い光線が降り注いでいるのだが、どこか優しく
透明感があるような気がする。
ふと、こんな季節の移ろいを何度も繰り返して、人は歳をとって死んでいくのだな、とい
う無常観のような感傷的な気持ちが湧いたけど、現実的な私はすぐそんな感傷を振り払い、
とりあえずごはんにしよう、と食欲の秋に突入したのであった。