●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
シリーズ7回め、もどきさんが親からもらったクセ。



シリーズ なくて七癖

金銭感覚

人は一生のうちに三回モテ期がある、と誰かがいっていた。それをもじっていえば、結

婚生活には三回離婚願望期がある、といえないか。

私の場合、その一回目は、結婚後まもなくやってきた。腕によりをかけて料理を作り、

その出来栄えを「どう?」と期待を込めて夫に聞いたときである。

「うん、うまい。で、この料理の原価、いくらかかった?」との返す言葉。この身もふ

たもないいい様にガーンときた。

人によって金銭感覚がそれぞれ異なる。それは育った環境や両親の教育やそのときの懐

事情の影響を受けるのだろう。

私に浪費癖はなく、むしろけちな方かもしれない。でも、あからさまに金勘定をもちだ

されるのを好まない。

実は、父は商売をしていたにも拘わらずお金を不浄なものと考え、金・金というのをあ

さましい、と考えるタチだった。従って仕事の集金が苦手で自分ではあまりやらなかっ

たほどだ。

また、私は小さい頃、「お腹が空いた」というと怒られた。「おやつちょうだい」とか

「なんかちょうだい」と言え、というのである。その理由はお腹が空いたというと食事

を十分に与えていないように思われるからだというのだ。「武士は食わねど高楊枝」の

精神で、父はいわゆる格好つける癖があったのだ。子どもの私にそんな見栄なんてわか

るはずがなく、とんだとばっちりであった。

私はそんな父の影響を受けて育ったせいか、やはりお金の話は苦手である。

けれども、貧乏も経験したし、欲もあるから大人になるにつれてそうもいっていられな

くなる。世の中、お金中心に動いていることは百も承知である。でもそう割り切ってし

まうことが気恥ずかしく、やっぱり相手に損させてはならないが自分も損したくない、

などとその折り合いでくよくよ悩むことが多いのだ。

ちょっと話を大きくすれば、資本主義である限り経済最優先は避けて通れないのだけれ

ど、最近の政治の損得勘定には目を覆いたくなる。増税にしろ、大飯原発再稼動にしろ、

経済優先で決定した最たるものだろう。


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