5/7のしゅちょう             文は田島薫

(年寄りのダンディズムについて)

ユーチューブで私の大好きなクロスビー・スティルス&ナッシュの3人組のコーラス

を見た時(本当は一番好きなのは、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングのヤ

ング、ニール・ヤングなんだけど)、それが、最近のライブ映像で、かつての若い頃

のスマートな体型でなく、ビア樽かハンプティダンプティのようなデヴィッド・クロ

スビーとそこまで行かなくてもかつての倍ほどの体重と思われるスティブン・スティ

ルス、やせてはいるけどあきらかに爺になった白髪のグラハム・ナッシュがよせばい

いのに、ビートルズのおなじみ「ノルウェーの森」を歌ってた。

コーラスは、決して下手なもんでなくて、久しぶりのライブのためということで3人

で熱心に練習したんだろう、きっちりハーモニーができ見事なもんだったんだけど、

なぜか、客席でも笑う声も聞こえ、私も見ててなんだか滑稽な印象を持ったのだった。

そのライブよりも 10年も前のライブでも同じ曲をやっていたから、これはずっと真面

目に練習してきたレパートリーだったし、実際その最近のライブのそれも全員笑いも

せず、真剣に演奏して歌ってるのがわかったんだけど、どうしても、もうろくした老

人の人形かなにかが、誠意一杯がんばってるか、またはだれかにあやつられて踊って

るような感じにしか見えないのだった。

その理由を考えてみると、まず、曲がポピュラーすぎて感動しにくい、さらに彼等が

演奏することによる新たな魅力の付加が乏しい、たしかに、彼等のデビューの時の斬

新なハーモニーはそのまま再現されてるんだけど、このわれわれのうまいハーモニー

でカバー一曲もいけるはずだし、この曲で受けないはずはない、って判断した、って

わかってしまう感じ。それでも、それを余裕での雰囲気で遊ぶように表現したら、そ

のリラックス感を楽しめたはずなんだけど、聴いたそれは、きっちり生真面目に決め

ようって肩の力入れて、どうだ、って若者に勝負を挑んでる様。

これは私の勝手な感想かもしれないんだけど、彼等をばかにしたいわけじゃないし、

こういうことは私自身にもあるわけだから、自己反省も含んでいるわけで、けっきょ

く、老人は若者と張り合ってきっちり間違いなく演奏することに自分の心身の衰えつ

つある部分に鞭打ってがんばるんだと、ルックスを含んだ総合点で若者に負けるはず

なんだから、老人にしかできない、言わば人生の余裕といったもんを表現するのがベ

ストなんじゃないかなと思うのだ。

それを確信したのは、その私から失敗の指摘受けた(?)3人組のひとり、スティブ

ン・スティルスの同時期のソロライブ、少々太めのおやじになった(それでもその10

年前の体型よりも自覚をもって大分絞ったようなんだけど)彼自身の若い頃のオリジ

ナル曲の演奏、当初客席から笑いや私語も入ってたんだけど、さすがオリジナルの力

はすごく、彼自身の自信も力強いバックボーンになったはずで、説得力のパワーがし

だいに伝わり、ちょっと崩れたり笑ったりしたリラックス感が却って魅力を伝えたの

だった。もっとも、これは私にも実行が難しいことなんだけど。




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