●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
シリーズ3回め、われわれ全員のクセ(?)。



シリーズ なくて七癖

日本人の口癖1

自分の癖は棚にあげて他人の癖はすぐ目に付く。

日本人の代表として、テレビによく出る政治家の癖などはからかいの的にもなってし

まう。石原都知事のパチパチ目、野田首相の気取った流し目、小沢一郎の語尾に力を

入れる口調、谷垣自民党総裁の演説のときこめかみに浮かぶ青筋、輿石幹事長のへの

字にゆがむ口元など。

それは癖というよりは表情とか口調というべきかもしれない。政治家は官僚の作った

原稿を読むことが多いので口癖は消えてそつのない言葉を選ぶ。だから日本人の口癖

の参考にはならないのだけれど、私がさまざまな人とインタビューして感じたこと

は、一般に「そうですね。やっぱり…」という言葉をよく使うことだ。商人、サラ

リーマンから評論家まで、この言葉が大好きである。もう、これは日本人の口癖では

ないかと思っている。

例えば、「最近子どものお稽古事の種類がずいぶん増えて多彩になりましたね?」と

言うと、関係者は「そうですね。やっぱり子どもは多くの可能性を持っていますか

ら、早くから機会を与えるという意味で必要なことです」といったふうに。

このときの“そうですね、やっぱり”は問いかけた相手と答えがおそらく一致すると

思ったときに使う一般的な言い方である。

ところが、こちらの意見と真っ向から反対する意見をいうときも使われる。

例えば「そうですね、稽古事が多彩だなんて嘆かわしい限りですよ。やっぱり、子ど

もは家庭で一貫した教育方針のもとに育てるべきなんです」なんて相槌を打つ。

はたまた新しい話題の口火を切るときに「そうですね…やっぱり」から話を切り出

し、なにがやっぱりなのかさっぱりわからない場合もあるからややこしい。

日本人のこうした口癖は日本人の考え方の癖を表しているのかもしれない。

まず、肯定してから話を進めるのは調和を重んじる日本人の民族性、国民性、ひいて

は文化、宗教までにかかわる現象なのではないか。この深遠なる考察?大風呂敷は次

回に広げるといたします。乞うご期待!


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