2/13のねこさん       文は田島薫

チビクロまっくろ忘れる 2

相変わらずチビクロまっくろは、私をさけているようで、先日も同じようにアパートの前

の貯水タンクの下入ってなんか言ってたし、ある時は、そば行って頭なでようとすると、

するっとよけてそばのアパートのアプローチを歩いて行って、向こう向いたまま伸びをし

て見せた後、そばの花壇の葉っぱのにおいを熱心にかぐまねしてから、アパートの通路の

中へ歩き去って行った。


あ、またあの人だ、こっち見て笑ってる。人ちがいだ、って言ってるのにしつこい人だね。

目合わせないことにしてそっぽ向いちゃおう、まてよ、そっぽ向いてる間にこっち近づい

て来ちゃうとまずいから、ちらっと見てみっか、おっとっと、目がしっかり合っちゃった。

やばい、こっちくんなよ、くんなくんな、ってる間に来ちゃったか〜。頭なでられる前に、

あ、そだ、ぼくはこっちに用を思い出したんだよね、って感じで、ゆっくりこ〜、歩いて

行って、ちら、っと、あ〜よかった今度はこっちへは来ないみたい。だって、ぼくには用

があるんだからしょーがないんだよね。ぼくはあわててるわけじゃないですよ、ほら、こ

のとーり、のんびりと伸びもしちゃうんだし、こっちの草のにおいもかがなきゃならない、

から、くんくん、や、これはほんとの用事じゃないけど、もちろん、そんなもんのはずは

ないんで、もっと、あっちに大事な用が、大事な用大事な用、なんちゃって。


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