思いつくまま、気の向くまま 文は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、思わず妄想を楽しんだ模様。
賑酉の市連理の神籤
また、酉の市がやってきた。
今年は二の酉までしかないので混むかと思っていたら去年並みだった。庶民は、もう神頼
みもあきらめてしまったようだ。
いつもの通りに並び、いつもの通りに参拝し、いつもの通りに熊手を買って、いつもの通
りに隣の妙見様でおみくじを引いたところから、いつもの通りでなくなった。
わたされたおみくじが午後の日差しに透けてみえる。見るとおみくじの上部に一本の白い
線が入っている。あれっ、用紙が変わったのかな、とよく見るとおみくじが二枚重なって
いた。
この夏、深川の富岡八幡宮で三枚のおみくじを引いたことは前に書いた。あの時は自分で
引いたので三枚が重なっているのがわからなかったのだが、こんどはちがう。
僧侶がおおきな声で経文を唱えながらおみくじを引く。その番号のおみくじをわきにある
引き出しから出してくれる。
この僧侶も長い。それだけ歳をとったということだ。指先の感覚がにぶったのだろう。
老妻に見せると、「あら、吉が二枚。いいことあるわよ」という。最近体調がすぐれない
ので少しは良くなるかな、と悪い気はしない。おみくじなんてものを引く輩のおめでたい
ところでもある。
実は、この二枚のみくじ世間をはばかる割りない仲。
「ねえ吉さん、今宵をのがしたらいつの日か…」と、仲を引き裂く僧侶の読経も聞かばこ
そ、心中覚悟でお吉っちゃんと手に手をとって、という一幕。
舞台は浅草、鷲神社は酉の市。つけた外題が「賑酉の市連理の神籤」。
芝居の見過ぎかな〜。