●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、季節のくだもので交流しました。



電「香り・酸っぱい」の輪

秋たけなわの10月。

実家からカボスが送られてきたという友人が、おすそ分けといって袋一杯にカボスを詰

めて我が家に届けてくれた。

ゴルフボール大のライムグリーンの見事な果実。漢字で書くと香母酢。字面を見るだけ

でも条件反射でつばが出てくる。

時は松茸、秋刀魚、鍋の季節。松茸には縁がないが、このすがすがしい香りと爽やかな

酸味を堪能しよう。

でもちょっと多すぎて使いきれないなと思っていたら、ごみだしで、前の奥さんとお隣

さんが立ち話をしていたので、早速2軒におすそ分け。

それでもまだ使いきれずにあるので、趣味のサークルに持っていっておすそ分け。

これでだいぶカボスの裾野が広がったと思ったら、11月になってなんと今度はユズを

3個頂いた。まだ冷蔵庫にはカボスが数個残っているのに、今年は「香り・酸っぱい」

の当たり年のようだ。

ぽん酢がわりにはそろそろ飽きていて、さて、どう使おうかと思案していたら、テレビ

のCMがヒントをくれた。疲れたときに食べたいものは甘いものと酸っぱいものなのだ

という。そこでユズもカボスを細かく刻んで砂糖漬けにして、ジャムがわりに、お湯を


注いでユズ茶・カボス茶にして「甘、香り、酸っぱい」で健康になろうと思った。

作り上げて味見をしたら、上々の出来であった。

そんなとき、おすそ分けした友人からメールが届いた。

「頂いたカボスに氷砂糖とお酢を入れてしばらく寝かしたら、おいしいカボスサワーが

できました。焼酎で割って毎晩楽しんでいます」

あっ、その手があったのか、とワンランク上の楽しみ方を下戸の私はちょっと妬んだの

だった。


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