●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさん、簡潔に一言言ってます。



電車の中で

そこそこ混みあっている電車の中。

立っている私の斜め後ろに若い男女が何か話しているのが聞こえた。

「・・・・・」

男の声はくぐもっていて聞こえない。

「えっ!うそっ!」

女の甲高い。・

「・・・・・」

男が何か一言いっているらしい。

「えっ!マジっ!」

「・・・・・」

「やばっ!」

「・・・・・」

「かわっ!」

一体、この記号のような会話はなんなんだろう?

私は思わず後ろを振り返ってみると、その男女は子犬の写真を見ているところだった。

こうした短かい叫びのような言葉で事足りる仲ってことだろうか。

でも最近、政治をはじめ、世の中すべてが言葉を尽くすことなく視覚に訴え、極端な言葉で

済ますことが多くなったように思う。単純化の方向にいかなければよいのだが・・・


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