1/16のねこさん       文は田島薫

うしねこさんが来た

先週の中ごろ、茨城の家の茶の間のコタツに入ってると、障子の下のガラスと縁側をはさ

んだのガラス戸の2枚のガラス越しに、手作り池の上の小さなコンクリ橋をホルスタイン

のような柄の太めででかいねこさんがのしのしと歩いて来たのが見えた。お、って思って

じっとながめてると、うしねこさんの方もこっちに気づいたようで、一瞬身体を低くして

立ち止まったんで、よ、って手を上げてあいさつしてあげたら、目を丸くしてちょっと考

えてから、ささ、っと身体に似合わない機敏さでどっかへ逃げて行ってしまった。


や〜、さび〜日なんだね〜、水が凍ってるし、ぼくはさびい日はきらいじゃないんだね〜、

暑いのは苦手だけど、さぶいぐらいの日の方がぼくには気持ちいいし、多分さびいせいで、

ぼくを追い払う人間が見当たらなくなるから、どこへ行くのも気楽でいいんだ。さて、こ

〜自然の枯れ木や、小鳥なんかをながめながら、済んだ空気を一人占め、って、思ってる

と、あれ?へんだな、向こうの方でなんだかいるはずのない人間が見えたような気がした

ね、じっと、よ〜く見てみると、ありゃ、人間がこっち見て手を上げた。怒ってんのか?

やばい、人間が手上げるのは、怒ってる、ってことのはずだ、笑ってるようにも見えても、

油断してるとこをぶたれちゃうのかもしんないから、ここは、ダッシュ!


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