●連載
がたやま娘のひとりごと      文はこんのたえこ


地方文化都市山形で、世界の様々なことを感じ考えている
賢くうら若い(?)娘の話を聞こう、疲れたおじさんおばさんたちよ!

たえちゃんとこの被災報告シリーズだす。



被災地の隣にて その1

昔、うちの「おしゃべり人形」の祖母がよく言っていた。

「食うもの何にも無くてなぁ、ひもじかったんだ。情けなかったんだ。」

最近、夫の祖母も言っていた。

「今の若い女の子、お化粧してキレイにしていて、神様みたいだ。」

私は昔の話を聞くのが好きなので、そういう話をよく覚えている。父や母、舅や姑が子

供だったので、知らないことを、私は知っていることもある。


その日私は、普通通り職場にいた。その時間は仕事もひと段落して、あと1つの要件を

端末に入力したらいったん終わり、という感じの。そして週末だったので、その後の仕

事も早く終わらせて帰ろう、と思っていた。そして端末に入力すべく、伝票を見ていた。

そうしたら、何かの音が鳴った。「何だろう?」と顔をあげて周りを見回したら、隣の

課の課長が携帯を見ていた。「変わった着信音だなぁ。でも面白い人だもんな。それも

アリだな。」と私は笑っていたのだけれど、周りのみんなも携帯を見始めたし、音もだ

んだん大きくなってくるし、いっこうに止む気配がない。

「え?何ですか?何の音ですか?」と半笑いで言い、誰かが何かを言ったので、聞き返

そうとした途端、揺れた。その瞬間は、「揺れた」それしか覚えていない。「キャー」

という声が聞こえた。ドーンときた、とかユラリと揺れた、とかは全く覚えていない。

ただ「揺れた」だけだった。

その変わった着信音だと思っていたのは、地震の警告アラームだったんだね。

それから椅子に座っていた私は、たぶん立ち上がったのだと思う。天井を見たら、蛍光

灯がガタガタ揺れていて、点いたり消えたりしていた。それからたぶん非常灯のような

ものに切り替わったように思う。そして端末は「オンライン障害」と表示されていた。

しばらく立って様子を見ていたが、座るとまだ揺れていて怖い。揺れが強くなったので、

端末機の下に避難した。でも、物が落ちてくるとか、そこまでの強い揺れじゃないかな、

と思ったりもして、出てみたりもしたけど、やっぱり揺れがおさまらない。そのうち、

上司から屋外に避難するよう指示が出た。みんなで出口へ行ったが、外の揺れはおさま

っていない。消えている信号機がユラユラ揺れているのを見た。

私の心臓はドキドキし、息も早くなっていた。


それから皆、家に電話をかけて安否確認をしようとしたが、まったく電話が繋がらない。

私は運良く夫と家と両方に電話が繋がったので、無事を確認した。それから職場で30分

くらい様子を見て、帰宅した。ロッカー室では家に帰る人たちと「お互い、気を付けよ

うね。」と言って別れた。


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