●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
この男雛は酒の効用も限界も知ってるようです。
おとぎ話シリーズ
お雛さまの会話
女雛「ねえあなた、こうしてちんまり座ってるのって退屈だわね」
男雛「仕方がないよ、年に1度のことだから」
女雛「お白酒呑みましょうよ」
男雛「えっ、昼間からかい?」
女雛「そう、昼間から。だって今日は3月3日、明日には片付けられてしまうのよ」
男雛「でも、キミは下戸じゃないか」
女雛「だから練習するの」
男雛「そんなの練習するもんじゃない。呑める呑めないは体質なんだから」
女雛「あのね、夕べ五人囃子が酒盛りをしながらすごく
嬉しそうに言ってたわ。『あ〜酔った!酔った! いいこんころもちだあ。世の中、酒があ
るからなんとか生きていけるっていうもんだ』って。そんなにお酒っていいものなの?」
男雛「まあね、酒を呑むといい気分になるよね」
女雛「そしてさ、五人囃子はこんなこともいったのよ。
『酒を呑んでこちらがぐでんぐでんに酔っ払ってバカ言っているのに、素面の奴がいて冷静
でいられるとしらけるもんだねえ』って」
男雛「うん、確かにのんべえにとって相手が呑めないとちょっと寛げないかもしれないね。
でも、だからって無理に酒を呑むことないよ」
女雛「お酒を呑むと心の中のタガがはずれて本音が出るっていうじゃない。私、人の本音を
聞いてみたいの」
男雛「本音を聞いてどうするんだい?」
女雛「・・・・」