●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
モノであってモノでない贈り物。
おとぎ話シリーズ
贈り物
一年中でもっとも寒い今、我が家ではお花見を楽しんでいる。
えっ、まさか、あの桜の?
そう、正真正銘の桜のお花見です。
実は話とはこうなんです。
暮れも押し詰まった大晦日。おせちを作っていると玄関のチャイムがピンポーン。あわてて手を
拭き拭き出てみると、宅急便のお兄さんが細長い箱を抱えて立っている。
「お花のお届け物です」
今頃何の花だろうとはやる心でダンボールを開けてみると、なんとただの小枝の束。
「ナニ?コレ」としげしげ眺めると小枝にはびっしりと小さな蕾をつけている。そして説明書。
「啓翁桜―冬に咲く桜」
(支那桜桃と彼岸桜を交配して作られたもの。太い幹はなく形の良い枝が何本もまとまって一つ
の株をつくる。気候条件をうまく利用した促成栽培で冬季に開花させることができる)
ただの小枝ではなく、立派な桜の小枝であった。
さあ、たいへん。大ぶりの壷を出してきて小枝を活けた。温度を管理して、水を換え一日千秋の
思いで開花を待った。そのときの幸せなこといったら・・・
そして待つこと半月。今ようやく満開を迎えた、というわけである。
さて、贈り主は? 今、流行の伊達直人?
贈り主のメッセージには
「お歳暮なのか、お年賀なのか、わからない謎の贈り物となりましたが、厳寒のこの時期に一足
早い春をお楽しみください」
とある。どうやら差出人は花咲かじいさんのようである。