●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
われわれのとなりの現実に、おとぎ話がまぎれこんでました。
おとぎ話シリーズ
ごちそう
せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これ春の七草。
ほら、いえた!
1月7日にはこれらの野菜を入れた七草がゆを食べることになっている。
昔の人の知恵はすごかった。
1年の無病息災を願い、厄払いの行事だが、ちゃんとした合理的な理由がある。お正月のご馳走
に疲れた胃腸を消化の良いお粥でいたわり、青菜の不足がちな冬場の栄養補給としているのだ。
それなのに、それなのに・・・
テレビの料理番組ではやさしそうなおばさんが、鳥のだし汁に干ししいたけの戻したのや貝柱を
入れて…と、中華風七草がゆの作り方をやっている。コレじゃ、何の意味もない、またまたご馳
走じゃん。
世の中、太る、太ると嘆きながら飽くなきおいしいものへの追求はとどまることをしらない。
これを食べるとごはんがすすみます、というコマーシャルのあとにメタボ対策の番組が放映され
るこの矛盾。
おいしい料理があるといえば東へ飛び、変わった料理が
あるといえば西へ飛び、グルメ情報は日本全国を駆け巡る。
そんな現象を苦々しく思っている者もいるのです。それはホームレスの人たちだ。
職もなく金もなく三度の食事にも事欠くありさま。
年末にテント村ができ、炊き出しがあったとき、おじいさんが、今日初めて食事するというブタ
汁をすすりながらこうつぶやいた。
「世の中にこんなうめえものがあるなんて・・・」