●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
もどきさんの新シリーズ、年頭に、夢とか幸せ、って?ってメッセージ。



おとぎ話シリーズ

福袋

私は福袋を買ったことがない。

誰があんな売れ残りを詰めたような得体のしれないもの買うもんですか。

あれは物欲のかたまり、闘争心を刺激する売り手の罠、一種のギャンブル、お金と引き換えに

味わう単なるスリル……

極寒の早朝から長い時間並んで買おうという人の気が知れぬ。

と、散々福袋の悪口をいったところで、そんな私が福袋を買う羽目になった。しかも二つも。

老獪なウサギに「これは運だめし。きっとラッキーな年になるよ。さあ、さあ、度胸試しだ!」

と耳元でそそのかされたからである。

ラッキーとか度胸とかの言葉にめっぽう弱い私はつい衣類と雑貨の二つを買ってしまった。


さて、両手に二つの紙袋を提げて歩いていると、若い娘さんに声をかけられた。

「あなたのその小さい方の福袋と私の大きな福袋と交換していただけません?」

私は大きいのは沢山入っていて得かもしれないと思い、

「いいですよ」

と私の小さい方の福袋を渡した。

またしばらくいくと、中年のおばさんが近づいてきて、

「これ小さい袋ですけど、高級ブランドの店の福袋なの。あなたのそちらの福袋と取り替えて

くださいな」

という。私は高級ブランドと聞いて二つ返事で大きな衣類の袋と交換した。

家に帰ってわくわくしながら早速福袋開けてみた。

大きい袋にはなんと、7〜8個の大きく膨らんだ風船が入っているではないか。そして表面に

はミント、カモミール、ローズ、ラベンダーなどアロマの名が書いてある。ミントの風船の口

を開くと香りが部屋中に漂った。

香りの福袋、なんか癒されるう〜

今度は小さい袋を開けてみると、何種類かの種があった。何、これ? 花の種のようだけど何

の花だか書いてない。つまり種を蒔いて、芽がでて、花が咲いてみないとわからないという趣

向である。

なんと、ながーいワクワク感!

福袋を交換して正解。これぞ、幸せ一杯の真っ当な福袋なり。



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