思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、「こらっ!」って言ってます。



ひと言ですむこと

相撲界がこんどは八百長問題で揺れている。

相撲協会は外部有識者による特別調査会なるものを作って調査を始めた。

相撲の八百長なんて昔から聞いている。現に三十年ほど前に現役だった元力士が、「本当に

困ったときはそういうことをやった」と証言している。

今回の事件の一番悪いところは、八百長がメールという公器を使って恥じることなくおこな

われていたところにある。

親方衆は知っていたはずである。これは人を使ったことがある人はわかるだろうが、部下の

おかしな行動はいくら隠してもわかるものだ。

そのときに「こらっ!」と、ひとこと言えばすんだことだ。

協会は、八百長を見過ごし、事が起こるとあわてて外部に調査を委ねる。そこから聞こえて

くることは、八百長の元因は、待遇に差がありすぎるからだ。かくかくしかじかの手順でや

った。など本末転倒の議論ばかりだ。

これは、モラルの問題である。生活環境が悪いからと言って悪事が許されるわけではない。

立件は難しいといわれている事件を根ほり葉ほり調査するより、協会は知っているのに、な

ぜ「こらっ!」といわなかったのかを調査するのが本筋だろう。


小澤問題も同じだ。

政治家の究極の仕事は、税金の再配分にある。

政治というものは、帳面が合っていればよいというものではない。それなのに、国民に説明

できない金のながれをつくり、法律論で逃げようとしている。

国民の税金を預かる者が、いかに政治資金とはいえ不明朗な行動をとるということはやはり

モラルに反することだ。

昔は、看過しがたい行動を知ると「こらっ!」と諫める政治家がいた。長らく政治の裏舞台

の頂点にいた彼はこのような人にめぐまれなかった。これは小澤氏の不幸といえよう。

また、モラルとは程遠い政治力学とシンパシーを振りかざし、小澤氏に「こらっ!」と言う

センスを持ち合わせない人間を自分の支持者だと思っているとすれば、重ねて不幸なことで

ある。


悪事を正すのに外堀から論じるのを習いとするなら、電車の中で騒ぐ子供一人叱れなくなる。

モラルを欠く人間に「こらっ!」のひと言も言えない時代になってしまったのか。


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