2/14のねこさん       文は田島薫

がまんくらべ

日曜の夕方4時半ぐらいになって、いつも月曜に食べる(?)サケの中骨缶が切れてること

に気づき、自転車でいつもの店より遠い線路の向こう側まで出かけて、その帰り、ちょっと、

ねこよこちょう角の家の庭のテラスをのぞいて見た。ま、寒い、すぐに暗くなりそうなこん

な時間に、だれもいないだろーなー、って思ってたんだけど、なんかいる。テラスのてすり

と、テラスの床にふたつのだんご状の固まりが、ひとりはぶちねこさんで、ひとりはくろと

らさん。どちらも動かない。


ためじろーのやつが、またあの奥さんのいるテラスでがんばってる、っていうのに、ぼくは

そこへ、近づく勇気もない、っつーことで済ましちゃうのはぼくのプライド、つーもんが、

ゆるさないっ、ってことになったもんだから、あれ?いつそんなことになったんだ?ま、こ

まかいことはいっか、ってことで、ま、そんなわけで(どんなわけだ?)、テラスに来た、

つーわけなんだけど、ためじろーのやつ、てすりに乗っちゃって、うまいとこ乗ったもんだ

ね〜、あそこなら、いざ、奥さん出て来ても、すぐに飛び下りて逃げられるからな〜、ぼく

も初回はあそこからの方がよかったんだけど、先に取られちゃったか〜、しかし、こーなっ

たら、そんな軟弱な場所なんか、ばかやろー、ってことで、ぼかー、いきなり、テラスの床

のガラス戸の真ん前に座っちゃうんだかんな。ん〜ん、くつろいでるふりくつろいでるふり、

ちょっと背中をまるめて、お、なんだか毛が立っちゃうね、背中もこって来た感じだし、し

かし、今にも奥さん出てくんじゃないか、ってだめだ、立とう、って顔上げる、ってーと、

ためじろーのやつが笑ってるよ、なんだ、ぼくは逃げようと思ったわけじゃないんだぞ、も

ーちょっとガラスの方へ近づこーって、思っただけだぞ、ほら、こーやって、うひゃー、自

分でもっときびしー事態にしちゃったぞ、ば、ばかやろー、奥さん出て来い!


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