思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、自分の探究心の一例を垣間見せてくれたようです。



おみやげ三つ…

イギリスとドイツに住む友人が相次いで予定外の帰国をした。

どちらも老親を心配してのことで時の流れを感じる。

毎回この二人の帰国の楽しみは、再会の喜びはもとより住んでいる人でなければわからな

い気の利いためずらしいおみやげにある。


おみやげといえば、『おみやげ三つ たこ三つ』という言葉を思い出した。

生活史を書いた本には、『子供が別れるときに相手の背中をたたいて言った』とあるがそ

んなことをしたような気もするが定かな記憶はない。

おみやげはわかるが“たこ”は“蛸”で、なにかの語呂合わせだと思っていた。

急に気になってネットで調べてみたら、西條八十作詞・中山晋平作曲の童謡であった。

ところが歌詞がひらがなで書かれているので“たこ”がなにを指すのかわからない。

そこで持ち前の野次馬根性が頭をもたげ、調べてみることにした。


ヒントは、歌詞の二番。

『おみやげ三つに たこ三つ

たこは たこでも いたいたこ


せなかにしょわせる いたいたこ

そらそらあげるよ ぽんぽんぽん』


『たこは たこでも いたいたこ せなかにしょわせる いたいたこ』という変わった言

葉をたよりにいろんな“たこ”を調べてみたところ、

たこ=【馬脊瘡】馬の背にできる荷ずれの瘡。鞍傷。というのに出会った。

これなら歌詞と符合するような気がする。

昔々は、荷駄のなかに楽しいおみやげがあったのかもしれない。


ネット上でもこの“たこ三つ”の意味を教えて、という質問がいくつかあったが回答は皆

無であった。また、凧の字をあてたものがあったが『いたい凧』なんて想像できない。

【馬脊瘡】も老生の勝手な推理なので信用なさらないように。

言葉の達人西條八十のことだ、きっとちゃんとした意味があるはず。

昔の言葉を知らない現代人には謎である。歌詞の解説を書いてほしかった。


おみやげは、大きく分けて三つある。

義理みやげ=職場で余計に休暇をもらったときなどに必要。行った先の名前が入っていれ

ばなんでもよい。

お返しみやげ=出かけると必ずみやげを買ってきてくれる人がいる。そうそう知らん顔も

できないのでたまにはお返しに買ってくる。相手はあちこちよく知っているので、ちょっ

と気がぬけない。

真心みやげ=相手が喜んでくれるのを期待して買ってくる。これが一番むずかしい。相手

の立場となにを喜んでくれるのかよく考えないといけない。センスと真心を試されること

になる。

三つにこだわって書いてきた。

おみやげ二つはもらったから、近々三つ目があるような予感がする。


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