●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今週から、もどきさんの新シリーズです。ニューヨーカーの友人!から。
聞き書き ニューヨーカーの見たニッポン
緊張感のない日本
ニューヨーカーといっても実は日本人である。
でもニューヨーク在住50年、しかもど真ん中のマンハッタンに住み、女の身でしかも
独身でバリバリに異国の地で渡り合ってきたまぎれもないニューヨーカーだ。
しばらくぶりに帰ってきたので、最近のアメリカ事情や久しぶりの日本がどんな風に映
るのか、以下ネホリハホリ聞いた話である。
銀座三越正面入り口で待ち合わせる。
休日でもあり、最近リニューアルされた三越とあって物見高い大勢の女客が、同じよう
にライオン像の前で待ち合わせをしていた。
時間前にいくと、すでに彼女はスラリとした細身の体をダウンコートに身を包み、人ご
みからはずれるようにしてデパート内で佇んでいた。
“お久しぶり!”の挨拶をしてから、一緒に歩き出すと、すぐ「異様だわね」といった。
「えっ、なにが?」
「あの待ち合わせの集団よ。同じような顔して同じような服装でしかも女性ばっかり。
ニューヨ−クじゃ考えられないわ。ニューヨークは背の高いのや低いのや黒い肌や白い
肌がいるでしょ。顔つきもバラバラなら服装もバラバラだし」
なるほど、日本は均一の国だったのだと思った。
「早くきてさっきユニクロへ寄ってきたの。驚いちゃった。私が20年前にニューヨー
クで買ったこの紫のテカテカ光るダウンと同じようなのがたくさん並んでいるのよ。今
流行なのね。」
と笑う。
「それにみんな日本人は、満ち足りて幸せそうな顔しているわ。険しい顔している人な
んかいやしない」
「だって、ここは銀座ですからね」
と私がいうと、
「いえ、同じようなニューヨークの繁華街を歩いても、放心した暗い目をした男の一人
や二人必ず必ず地べたに座っているのよ。なにしろ大人10人いればそのうち一人は失
業しているから。そりゃ、緊張感があるわよ」
そうか、なんだかんだいっても日本じゃ、まだ飢える人はいないし、まだまだ豊かなの
だと思う。