思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい、騒動の構図を見切って高みの見物してます。



どちらを立てても治まらない

「あちらたてればこちらがたたず」という諺がある。

双者両立はむずかしい、というくらいの意味だろう。


尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件。

中国の面子を立ててなんとかまるく治めようと思っていたやさき、こんどはこちらが立ちあが

ってしまった。

中国漁船衝突映像の流出である。

一海上保安官のとった行為にたいして「よくやった」と「けしからん」の二つの意見がうずま

いている。

この「よくやった」に関連した記者の質問に「よくやったという人はどのくらいいるのですか。

数字で示してください。わたしは国民の大半がそう思っているとは思わない」と官房長官が苦

しい答弁をするくらい政府はこの一件に頭を悩ましている。


「よくやった」派は、活字とはいえ内容は公開されているし、携帯電話まで取り上げられ“コ

ケ”にされた国会議員も見ているので秘密とは言えない。だから公務員の守秘義務違反にはあ

たらないといい、「けしからん」派は、政府がヒ・ミ・ツと言ったのだから公務員の守秘義務

違反にあたるという。まるで「露は尾花と寝たという…」の世界である。

冷静に考えてみても、政府のいうヒ・ミ・ツは後出しジャンケンなので正しい意味の秘密とは

いえない。しかし、国家公務員が上司の許可なく映像を持ち出したことは法に触れるだろう。


問題はこの先だ。

なんでも衝突映像は公開しないという密約があったとか。これが本当ならば、それに沿った結

論が出なければ中国の面子が立たない。

「日本」と「中国」。「よくやった」と「けしからん」。

この二つの争いは、どちらを立てたらまるく納まるのか。

自己保身に窮境とするオロオロ内閣のお手並み拝見というところである。


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