5/31のしゅちょう             文は田島薫

(逆境の醍醐味について)

困ったこともなく、何不自由なく楽しく一生を送ることができれば、それに越したこと

はないし、だれでも、そういった境遇を望んで日々生活してるのかもしれないんだけど、

現実は、他人から見て、あの人は幸せそうだね、うらやましいね〜、ってだれもが思う

ような人にも、なんかしら困った事情があったりするもんで、万全の幸福、って人はあ

まりいないようだ。ベンツに乗って贅沢してるように見える人も実は、求めても心を許

せる伴侶や友人がひとりも作れない孤独者で、おまけに毎日透析を受けなければ死んで

しまう重い腎臓病だったり、会社も実は倒産と破産寸前だったり、幸福そうに見える家

族も、父親が失業中だったり、家庭内暴力があったり、寝たきり老人を日夜看護しなく

てはならなかったり、諸々。

それでも、自分は幸福だ、って自他ともに認める人はいるもんで、そりゃ、多少困った

問題があっても、それが耐えられるぐらいのもんだからだろう、って言えるだろうけど、

ま、そういった逆境ってものは、これぐらい以上からみんなは不幸になる、って基準が

あるわけじゃないから、他人から見て、よくあんな悲惨な状況で楽しそうにやってられ

るな〜、自分ならとっくに一家心中もんだけど、などと言われるぐらいでも、平気な人

もいる。

もっとも、そういった人がほんとに平気かどうかは怪しいわけで、手放しで自分が幸福

で楽しい、って喜んでるはずは多分ないんだけど、そういう逆境に強い人は確かにいる。

そういう人は多分、逆境をどっかで「楽しむ」能力があるのだろう。

たとえば、アクション映画などで、主人公が重大事件に巻き込まれて、命を狙われ続け

たり次から次へと恐ろしい脅しや危険なめに会うのを、ギブアップしないでしのぎ続け

るのを、観客は楽しむわけだけど、現実にその主人公のような立場だったら、ストレス

ですぐに参っちゃうところだろう。それを、自分のことを、第三者の観客のように見れ

たら、それを楽しむことができるのかもしれない。

逆境進行時には、そんなに楽しくはないかもしれないけど、少なくとも、そんな逆境を

なんとか切り抜けた後、人生をふり返ると、や〜あの時は本当に大変だった、って語り

ながら、人生の面白味みたいなものを、そんな語れる苦労がなにもなかった人生よりも、

ありがたく感じられるかもしれない。




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