5/31のねこさん 文は田島薫
ねこさん危機一髪
土曜の午後、自転車で図書館へ行く途中、よくねこさんを見かける古い安普請アパートの
前の道の反対側のへりを左側通行のみけのねこさんがこっちへゆったりと歩いていた。
自転車を止めて行き過ぎるねこさんをずっとながめていたら、ちょっとけげんそうにこっ
ちを見ながらも歩調を変えずに歩いて行き十字路の角を左に曲がりそうになった時、私も
そっちへUターンして近づいたら、ねこさんちょっと慌てて、曲がった角の電柱の裏にか
くれ、すきまからこっちを見つめてる。しばらくこっちも見つめてたら、逃げるそぶりで
後ろをふり返ったんだけど、そっちの道の2軒めぐらいの家が外装のリフォーム中で、道
路に作業員がひとり立ってたもんで、またこっちへ向き直りまたぎょっと身構えたので、
ねこさんの視線の方を見ると、ねこさんの方へ向かって道の反対側から顔色の悪そうなお
っさんが歩いて来るのが見える。ねこさん、何か決心したように、いきなり飛び出して、
私の横をすり抜けまた元来た道の今度はアパートの方へ走りぬけてから、こっちを見て、
少し落ち着いたようにまたゆったりと歩いてアパートの右すみを道と直角に曲がり歩き去
って行った。
なんだか歩いてるぼくを見てる人がいるね〜。ねこが好きなんだね〜。ど〜、ぼく、って
落ち着いててかっくい〜でしょ、あんたもぼくのようになれるようにがんばりなよね。
あや、そのまま行き過ぎちゃうんだと思ってたら、しつこく追って来た、あやしーやつめ、
こりゃ、ただのねこ好きじゃなくて、しゃみせんや一味かもしれない、こーやってても、
仕方ない、向こうへ逃げちゃおう、ってふり返ると、おっと、やばいっ、すでに一味のは
さみうちにあっちゃってる、あや、こっちからも、完全包囲網だ。どーしよー、こうなっ
たら、捨て身の脱出劇だ、ダーッシュ! …あれ? だれも追って来ないね〜。