5/10のねこさん       文は田島薫

ぼくのガーデンの土曜

レンガなんかを多用して新築して庭なんかもそうやって贅沢にしたために、銀行からお金

借りて夜まで働かなくちゃならないそこの家の人の代りを勝手に買って出て、平日にゆっ

くり庭を楽しんでるねこさんの話を前にしたんだけど、いい天気のこの前の土曜日、食料

の買い出しの帰り自転車でそこ通ると、ねこさん、今度は玄関のよこのレンガの台の上で

のんびり毛づくろいしてた。

お、っと思って止まってながめようと思ったら、角から軽自動車がこっちへ曲がろうとし

て来たもんで、その家は角にあって私も角に立ってたもんで、しかたなく大きく車の向こ

うを曲がって車をやり過ごしてから、そっちの道のへい越しに背伸びしてみたら見にくい

もんで、また元の道にもどり、開きの大きい門トビラから中ながめた。ねこさん全然こっ

ちを見向きしないで、のんびり同じ作業をしてる。


や〜、ここのきれいな庭はふだんはいつも好きな時にぼくのひとりじめなんだけど、働き

づめのここんちの人も、土日は家にいるから、ぼくのひとりじめ、ってわけにはいかない

んだ、でも土曜は仕事疲れで午後遅くまで寝てるし、玄関から出て来ることはないんで、

この玄関わきの十分気持ちいい庭はぼくのひとりじめなんだ。

なんだか道の方で人がこっち見てるけど、目あわせるとめんどーだから、無視しちゃうん

だね〜、ゆたかな気分のぼくは、だって、こんなに贅沢な庭をひとりじめしてるぼくって

けっこう上流階級ってことになると思うんだけど、外の道を忙しく行ったり来たりきょろ

きょろしてる人間や車、つーもんはそれをうらやんじゃう下流階級ってことでしょ?



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