思いつくまま、気の向くまま 文は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせい曰く、鳩山さんもわれわれも同じ日本人。
出来心
英国人には「できごころ」という概念はないらしい。
行動力抜群の猛妻がイギリス在住の友人宅に滞在したとき、話題が出来心におよんだ。
ところが英国人である夫君はまったく出来心というものを理解できなかった。
曰く、思考、行動すべて己が発するものには責任がある。出来心などという責任のあいまい
な考え方はありえないと、とりつくしまもなかった。そこで、万国共通の事象、盗みに話題
をしぼって説明をはじめた。「もともと盗む考えは毛頭なかったのに、商品を見ていたら、
つい盗んでしまった。このように盗む気持ちがなかったのに、ちょっとした気持ちのゆらぎ
で悪事をしてしまうことを出来心といい、日本では罪の軽減に影響することがある」という
と、「とんでもない。いかに盗む気持ちがなかったとはいえ、実際に盗んだときは、盗んで
やろうという気持ちが支配しているのであり、なんの考えもなく物を盗むなんて理解できな
い。ましてそのような行動が罪の軽減に影響するなんてとんでもないことだ。いかなる行為
であれ、自分の行動には責任が生ずる」と、この出来心談義は平行線に終わった。しかし、
それが国民性なのか宗教が影響することなのかはわからない。
あとで微妙な言い回しの通訳にあたった友人が、頑固な亭主で申し訳ないと言ったそうだが、
その国にない言葉を説明するということはどんなに大変なことであったか。
普天間移設問題で、下準備もなく県外移設をぶちあげていた鳩山首相が、ドタンバで「わた
し馬鹿よね〜」と言っても沖縄県民と徳之島の当事者以外は大して腹も立てなかった。これ
は「基地の県外移設」なんていうことは、もともと鳩山首相の(本来の意味に少しはずれる
が)“出来心”だと受け取っていたからではないか。
もっとも、ほんの“出来心”(こちらは本物(笑))で民主党に307議席も与えてしまっ
た国民だから、このへんの理解は早いのだろう。