●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさん、先週からの沖縄土産話の続きです。



シリーズ あんな話こんな話

ランチを求めて

沖縄の日の出は遅い。寝坊をしてのんびり車で30分の海洋博公園へ出かけた。海岸沿

いの見所の多い広い公園なので、結構観光客が多い。

昼時は過ぎたけどレストランは混んでいそうなので、きっと走っていれば道路沿いに食

堂ぐらいはあるだろうとタカをくくって、とりあえず本部町、今帰仁村と半島をぐるり

と回ることにした。

見通し甘かった。

公園を離れると店はおろかまったく食べもの屋は見当たらず、ほとんど荒地か、さとう

きび畑かパイナップル畑か林だった。

すきっ腹を抱え、殺風景な半島をほとんど一周して名護市に入るころ、ようやく店があ

り郵便局のマークが見え、その横に定食の文字を発見。迷わず入った。

天井もむきだし壁も板張りで決してきれいではないけど、海に面して大きく窓をとり明

るい。

客はおらず、壁に取り付けてあるテレビの前で宮里藍ちゃんのような濃い顔の女性が一

人テレビを観ていた。

窓際に座ると彼女は「いらっしゃいませ」も言わずのっそり立って注文をとりにきた。

不機嫌なわけはすぐわかった。テレビはオリンピックのフィギュアスケートで、あの浅

田真央選手の演技の真っ最中だったのだから。誰だって注目度ナンバーワンの華麗な演

技に目が放せない。(チッ!間の悪い客!でもやっぱり商売、商売)と彼女は気を取り

直したのだ。

壁に貼ったお品書きは10種類ぐらいでその半分は○○チャンプルメニュー。とりあえず

ゴーヤは今季節ではないので麩チャンプルを注文する。

これが当たり!空腹を割り引いてもおいしかった。しかも味噌汁には固めの豆腐と海草

が入り、漬物もついて550円也。安っ!

(お楽しみのところお邪魔しました)

4日目レンタカーを返してバスで名護バスターミナルへ戻ったときも昼時だった。やは

り回りは住宅街で店らしきものは何もない。市といってもまったくさびれているのだ。

きっと物流は動かず経済は停滞しているのだろう。途方にくれていたら、目の前に個人

住宅風なのにメニューの書いた看板が立てかけてあるではないか。入ってみると画廊喫

茶だった。

店内の調度品はなかなか凝っていて窓にステンドグラスまで嵌め込んであり、壁には沖

縄の漁村を描いた油絵、そして香り高いコーヒーの匂い。きっと店主のこだわりの道楽

商売に違いない。

頼んだトーストとサンドイッチ、コーヒーも当たりだったが勘定は2人分で2020円

也。高っ!



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