●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
思わぬきっかけでエライ主婦の本音が聞けたようです。
シリーズ あんな話こんな話
嫁・姑
ご近所のA子さんのエライところは、お姑さんと一緒に住んでいて非常に仲良くうまく
やっていることだ。
2世帯住宅というわけでもなく、各部屋を自由に使っているから細かいことで気苦労も
多いことだろうけど、愚痴ひとつきいたことがない。
しかもA子さんのご主人は今をときめく建築デザイナーで家を仕事場にしており1日中
家にいるのだ。
そのご主人はなかなかおしゃれで長髪にゆるくパーマをかけひげをたくわえていた。い
かにもこだわりの自由業です、という風情。
ところが先日お見かけしたら、ご自慢のひげがない。
A子さんにあったとき、私は
「ご主人はひげを剃ってしまったの?」
と聞いてみた。
すると、
「ひげがあると印象が威圧的になってどうも交渉事がうまくいかない、といって突然剃
ってしまったのよ。それでね…」
そこでA子さん声をひそめる。
「ウチの主人、いつも寝る前ね、長髪のパーマに寝癖がつかないようにネットをかぶる
んだけど、ひげが無くなったらお姑さんにそっくりなっちゃうの。それをみるたびに私
嫌になっちゃう」
私はネットをかぶったご主人を想像して懸命に笑いをこらえる。
そしてA子さんの本音を聞いてしまって、やっぱり、昔から嫁・姑の問題は永遠のテー
マだなと思った。