1/12のしゅちょう 文は田島薫
(おもしろい人生の送り方について)
楽しく人生を送れたらいいな〜、ってだれもが思うだろうけど、どうも、楽しい時間
は早く過ぎ、苦しい時間はなかなか過ぎない気がする、ってことはだれもが口にする
ことで、人生の終わりに、楽しかったけど、とりたてて話すこともない平穏な生活で、
あっと言う間に月日が過ぎてしまった、って思うのもちょっと寂しい気もする。
でも、長い過酷な生活だけがずっと続いて、やっと人生の終わりにこれでゆっくり休
めるほっとした気分だ、って言うのも、それが、なにか人のためになる立派な目的に
人生をささげた、って言うなら納得できることかもしれないけど、それに楽しみが全
然なかったとしたら、やっぱり寂しい気がする。
人生を映画にたとえたら、やさしい家族と隣人たちが、一切のいさかいもなく、どん
なトラブルにも会わず、毎日美味しい食事をし、きれいで高価な衣服を着、美しい環
境の中で、平和に暮らした、って物語があったとしたら、見てる方はすぐに退屈して
しまうだろう、それだったら、逆に、次々過酷なトラブルに見舞われ、悲惨な情況に
翻弄され苦しんでる家族の物語の方が断然楽しいはずだ。もっとも、その話がただ悲
惨なだけで、その主人公が逆境に対して戦うこともなく、なにも手出しもせずただ嘆
くだけで、なすすべもなく全員死に絶えてしまう、っていったもんだとおもしろくは
ないだろう。そうではなくて、それと正面から取り組んで悩んだり果敢に戦ったりす
ることで、俄然面白味が出て来る。
でもそんな悲惨な目に会う人生は人のを見てる分には楽しいかもしれないけど、自分
がそれやれ、って言われたら、だれだっていやなことだろう。
じゃ、平穏無事で何事もない、百年一日の生活をして、あっという間の人生だったね、
って言うのがいいか、それとも、や〜、大変な目にあった、でもいろいろ乗り越えて
来たし、あん時の苦労も今考えると楽しい思い出だったね〜、私の人生は凄く長かっ
たようにも感じる、ってのがいいか。
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