●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさんも、アイデアクラス会の続き。いろんな「違い」もおもしろがってます。
はとバスツアー漫遊記 その3
日の出桟橋から隅田川遊覧船に乗って浅草へ。
隅田川下りはいくつもの橋をくぐっては東京の裏側の表情を見せてくれる。裏側は時と
して汚いものだが人間の放つ体臭のようなものがあって興をそそられた。午前中に寄っ
たよそゆきの六本木ヒルズとは大違いだ。
浅草では、いつもながら雷門から仲見世通りを歩くと私はお祭り気分になる。
お土産屋の溢れるような色彩、狭い小路に漂うさまざまな匂い、天ぷらだったり、甘栗
だったり、人形焼だったり。そしてなかなか前へ進まない人の波が否が応でも高揚感を
あおってしまう。
きょろきょろしながら歩いているといつのまにか浅草寺へ到着。途中何人かはぐれてし
まい、お参りをすませるまでは一緒だった男子も、ストリップでも見ようか、なんて冗
談を言いながら伝法院通りへ消えた。
取り残された女子5人は、お茶でも飲もうと喫茶店を探す。観音さまの裏手から花やし
きの方へぶらぶらいくと、古着屋、靴屋、質流れの時計屋、埃っぽい小食堂などがごち
ゃごちゃと並ぶ。途中芝居小屋もあって、ちょうど芝居がはねたところなのか、役者が
芝居姿のまま通りに出て客を送り出していた。
なかなか喫茶店は見つからず横丁に入りこむと、酒臭い男がぶつぶつ呟きながら歩いて
いたりした。
深窓の奥様のようなMさんは眉をひそめ、「ここはダメよ」といって、ずんずん戻って
いってしまった。
私はこういうのが浅草らしくていいのに、と猥雑な街を面白いと思うタチなので、もう
少し奥へ行ってみたかった。そしてMさんは高校時代とちっとも変わっていないなあ、
と感じたのだった。