●連載
虚言・実言 文は一葉もどき
横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさんは、現代人の精神年令について考えてます。
シリーズ あんな話こんな話
歳のとり方
明治の人は歳のとり方が上手だった。
たとえば夏目漱石、森鴎外、正岡子規。どの人の写真を見ても、顔に「風格」という文
字がオーラのように輝いている。
だけど、漱石49歳、鴎外61歳、子規にいたっては35歳で亡くなっているのだ。皆
写真で見る限りとてもそんな年齢だとは思えない。すでに老成したような厳かな雰囲気
さえある。
正岡子規の和歌革新の書「歌よみに与ふる書」は31歳のときの作品である。30そこ
そこでこんな横柄な題をつけるとは! でも子規の立場からいえば、この時期はすでに
晩年なのであった。
実はこんなことを考えたのは、今行われている冬季オリンピックの出場選手、服装問題
で話題になった国母選手の謝罪会見をテレビで見たから。服装の良否よりも受け答えの
なんと子供っぽいことか。自分の話す言葉さえも人に聞く始末。
現代人は歳のとりかたに迷っている。無理もない。なにしろ人生50年からことわりも
なく急に80年以上に延びたのだから。
生き急ぐことはないからいつまでも子供でいたり、老いてもまだまだ時間があるので、
第二の人生を歩まねばならず、とかく肉体と精神のバランスが悪い。
現代人は心のほうがなかなか歳をとらず、いつまでも若いつもりでいるのは、結構とい
うよりは悲惨なことなのかもしれない。