2/1のねこさん 文は田島薫
うまちゃんやりすごす
土曜の昼過ぎ、自転車で出かけると、家の前の道の先にうまちゃんがゆっくり歩い
てるのが見えたんで、お、うまちゃん、などと言いながら近づくと、こっちに気が
ついたらしく、そんな時、梅ちゃんだったら、ゆったりと立ち止まって待っててく
れるとこなんだけど、うまちゃんは小走りになってすぐわきの家の駐車スペースの
車の下へ入りこんだ。
自転車でそしらぬ顔で行き過ぎるふりをしてそっち見てもなにも見えなかったんで、
また引っ返してから、おいおい、どこだ、って車の下のぞきこんだけど、やっぱり
見えないもんで、自転車にまたがりまた少し走るまねして、ふり返ってみると、車
の下から少し顔を出してこっちをほんのしばらく見てから、そこを出てまた小走り
に元来た道を行き、反対側の家が並ぶ路地の入り口で歩きに変えて入って行った。
ぼか〜いつもここの左側の路地曲がって行く散歩コースが気に入ってるんだよね、
ほら両側に木々の緑があって気持ちいいんんだ、あれ、後ろからとなりのあの人だ。
とととと、あっ、と、思わず路地と反対の方に走っちゃった、こっちじゃないんだ
よな〜、ぼくの行きたい方角はしかも、今はジョギング気分じゃなくて散歩気分だ
つーのに、こうやっていつもひとの行動を変更させるから、ぼくはあの人が苦手な
んだ。もっと知らんぷりしてくれればいいのに、いつもなんか言いながら追いかけ
て来るもんだから、どうしても逃げちゃうんだ。
ここに隠れて行き過ぎるの待とう。行ったようだけど、あの人の場合、また戻って
来るはずだから、もうちょっと待って、ほら戻って来た。さてあきらめたかな、よ
しもういいだろ、あっちを確認。あ、こっちふり返ってやがる。しつこいね〜、あ
れだと女性にもてないだろ〜な〜、また戻って来ると大変だから、ととととと。