思いつくまま、気の向くまま 文と写真は上一朝(しゃんかずとも)
シャンせんせいの「ぼけのたわごと」、タイトル変えました。
シャン先生、ずさんなお役所仕事による犠牲者の隣人に同情してます。
パン屋の目は泪
「おい、となりの空き地に囲いができた」。「へー」とは、落語の枕。
となりの空き地にできたマンションが去年の7月から立ち枯れになっている。
行きつけのパン屋の親父が「お宅の隣のマンション、いつ入るんでしょうね」と心配そうに
聞いてきた。もちろん客の増えることを期待しての言葉だ。
この空地は、50年ほどまえから旧住宅公団、現、独法URの団地があったところだが、改
築を機会に事業計画に失敗したURが金に困って約半分の土地を民間に売り払ったもので、
わが家も同じ土地に建っている。
さて、そのマンションだが、建築がはじまって半年もたったころ会社が倒産してしまった。
その後を引き受けた会社も完成を間近にしてまた倒産するという曰くつきのマンションであ
る。周りでは、あれだけケチがついたマンションは売れるわけがない。とひややかな目で見
ていたが、凄腕の販売会社が販売権だけをひきとり平均500万円引きで売り出してようや
く入居のはこびとなった。
ベランダからその引っ越し風景にヤジウマをきめこんでいると、あることに気がついた。6
〜7軒は隣の公団から移っていく。それはそうだろう、殿様商売のURの高家賃に嫌気がさ
し、現在の空室率は20%を超えるそうだ。経済的に計画の立つ人はマンションを買ったほ
うが得だ。写真でおわかりのように右から左への引っ越しで、台車でもできる。
かわいそうなのがパン屋である。公団の甘言にのって店を出したのはいいが、住民は減る一
方で商売にならない。パン屋のある公団の管理する商店街も半分が空いていて、積極的にテ
ナント募集はしていない。新たな人口増加に期待をするのは無理からぬことだ。こんど会っ
たとき「入居が始まったけど、公団から移る人が多いよ」といったらどんな顔をするだろう。
都市開発に名を借りて、利権に囲まれ税金の無駄遣いを続けるURに泪するのはパン屋ばか
りではない。
「行く春や鳥啼き魚の目は泪」芭蕉翁の句は惜別の句であるが、URのようないい加減な事
業体とは早く決別がしたいものだ。