サニーイズム             文はさぬがゆたか


ソノ世界的イラストレータ・サニーはココアメンバーですが、
ふだんのアート作業を栃木でやっていて、そこからの田舎だより。
サニーはデジタルも好きだけどアナログ生活大好きです。



「 テ ク テ ク 」

冬なのに暖かい日が続くから、ここんところよく歩いてる。

テクテクと歩いている。とぼとぼじゃなくサッサじゃなくて

やっぱりノンキに大したことも考えずテクテク歩いてみてる。

自転車もいいんだけど、足首の関節やスネに少しでも負荷を

掛け、スキーの怪我から復帰したいがためのリハビリを兼ね。

あ〜、それに犬の散歩も兼ねている。

手持ちぶさたなので、最初はスキーのストックなんてのも持ってみたが

なんだかカッコが悪い。じゃゴルフのクラブか?って思い振ってみたが

あんがい危ない遠心力に犬君もたじろいだ(笑)

そんな中に何度もダフッたせいでヘッドの取れたテーラーメイド社製の

ドライバーがあった。一流もんのカーボンシャフトはピュッピュッと切れの

いい音を出し、散歩のいい相棒になった。


家から東に抜ける。西の住宅の多い方は最近避けている。軒並みに飼い犬が顔を

出しワンワンキャンキャンするし、いちいち挨拶をするのも難なのだよ。

県道が広がったおかげで横切るにも危なくなり、遠廻りして信号のあるところまで

歩くのが億劫だ。歩くために出掛けるちゅうのにこの神経が可笑しい。

で、さびれた八幡神社への参道に入り鎮守の森を抜けると小さな沼がある。地元の

噂じゃ大きな鯉がワンサカいたらしいけど、水の波紋ひとつも立ちゃしない。

今日も鷺が数羽片足で立っているだけだ。

集落を抜けると春になれば淡い色彩で一杯になるであろう田畑に出る。今はただ

あぜ道の枯れ草にグサッグサッと力強く起こされた土の休耕田が延々と続くだけ。

そこで犬君のリードを放す。何も面白いものなんかないだろうに、あっちこっちと

走っては鼻を押し付け、片足を仰角120度?に上げちゃオシッコをしまくる。

それを見ながら自分もカーボンシャフトを振り振りテクテク歩く。

田畑を抜けると里山に入る。ところどころに心ない人のゴミが捨ててあったりする

ので覗いてみる。「二層式の洗濯機かよ〜〜長持ちしたなァ・・・」だったり

「雛人形かよ〜〜なんだか切ないな・・・」だったりする。

自転車じゃこうはいかない。

歩くだけだからと音楽うんぬんのラジオを持ってきたことがあったけれど、ありゃ

だめだと思う。せっかくの時間がまる潰れになっちゃう。

里山と言ってもたいした樹木はなくて雑木山だけれど、歩く早さで眺めていると

元気そうに見えた大きな松の木が、実は松喰い虫にやられていて蹴ってみるとスカスカ

の音で今にも倒れそうだってことに気ずく。人っこ一人いない雑木山ん中は日暮れにも

なると物騒にもなり、ねぐらに戻る鳥の音にもビックラこく!

そんな時にもカーボンシャフトが唯一の味方であり武器にもなると思ってる。

以前野良犬に囲まれた経験からの知恵だ。

そんなわけで、なんにもないような片田舎でもいろんな思いになれる。

だからついつい歩く。



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