●連載
虚言・実言         文は一葉もどき


横浜が縄張りの元タウン誌ライター。
貧しさにもめげず言の葉を探求し、人呼んで“濱の一葉”。
ウソ半分、ホント半分の身辺雑記を綴ります。
今回のもどきさんは、ふたりの天才についての考察。



シリーズ あんな話こんな話

This is it

ゴルフ界の優等生だったあのタイガーウッズが女性スキャンダルで今後ゴルフ 競技を

自粛すると宣言したときのこと。

ゴルフ好きの彼女が電話口で息巻いていた。

「このままタイガーウッズがゴルフ界から消えたらゴルフ界の大きな損失よ。 ゴルフ

の才能と私生活は別物なのに…私、ゴルフ仲間にこの問題をどう思うか 聞きまくった

わよ。そしたら男性は鷹揚だけど女性は厳しいわね。ま、6人も 愛人が出てきちゃ当

然だけどさ」

まあね、ウッズも人の子だったのね。問題はお相手の女性全員が白人だったと いうと

ころ。さすがの王者ウッズも密かに肌の色に劣等感を抱いていたのかも ね・・・

アメリカは人種のるつぼだっていうけど、意外と、いえ、だからこそ人種問題 には敏

感なのよね。ウッズを誇りに思っていた黒人社会の失望はいかばかりか しら。


話は変わってマイケル・ジャクソンの死後、その人気が再燃している。今度は 私が音

楽好きの別の彼女に電話をかける。

「This is itのDVDもう買った?」

今はとても手に入らないわよ。すごい行列だもの。ファンっていうか、マスコ ミって

まったく勝手よね。マイケルが白人のような顔に整形したといって非難 し、あのスキ

ャンダルで背を向け、今になって大騒ぎしてその才能を惜しむな んて・・・


天才で栄光もお金も手に入れたウッズとマイケル。超人である前に悩み多き人 間だっ

たということ。希望の星だったからこそ白人にはないバッシングを受け たということ。

This is it.では終わらない。

複雑でデリケートな人種問題を抱えるアメリカ社会ならではの話である。



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