2/8のねこさん       文は田島薫

うまちゃん引き返す

きのうの午後、一緒に出かける家人が先に玄関を出てまたすぐ戻って来て、ちょっと

ちょっとと手招きするんで、一緒にドアの外出てみると、わが家の雑草園にうまちゃ

んが入って来ててこっちを見て固まってるとこだった。

うまちゃんおいで、などとふたりで声かけたり手招きしたりしてるのを、当人じっと

ながめてたと思ったら、急に向きを変えて小走りに道路の方へ出て行った。

や〜、午後のこの静かな時間、ぼくの専用トイレ、ここのふかふかといっぱいの草の

上でしっこすんのが好きなんだよな〜、だれにもじゃまされないひとりの時間。ん?

って言ってるそばからなんだかドアの開く音がして、ありゃ、ここんちの人が顔出し

たぞ、どーしよーかな、ども、って言って散歩してるふりしてわきのフェンスまたい

で帰っちゃう、って手もあんだけど、フェンスの鉄が冷たいからな〜、って迷ってる

て〜と、またドアん中入っちゃったぞ、今のうち逃げちゃおーか、いや、まてよ、こ

のままだれもも〜出て来ないこともありうるし、そっちにかけてみっか、って迷って

る間にもう出て来ちゃったよ、今度はふたりだ。さっきよりも悪い状況だ。や〜、ま

いったね〜、だからさっきのうちに逃げちゃえばよかったんだ、でも、まてよ、じゃ、

なんで、今逃げるのはだめなんだっけ?あ、そーか、別にここんちの人はぼくをきら

ってるってわけじゃないから、目の前で逃げちゃうと失礼じゃないかってぼくは感じ

てるんだね。どーしよー、あいさつしてからあの冷たい鉄をまたいでくか、ん〜と、

やっぱ、シツレー、とととととと。


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