思いつくまま、気の向くまま
  文は上一朝(しゃんかずとも)


シャンせんせいのガンリキエッセー。
シャンせんせいが、わかりやすい表現について。しかし、リージョンコード、って?



街かどで聞いたことば

「定常的」

銀行のATMの前でオバサンが茫然としている。

係員がよってきて「なにかお困りですか?」

どうやら高額の振込をしたいのだがやり方がわからないらしい。

係員の手助けで無事振込が終わった後…。

「この口座を“テイジョウテキ”にお使いになりますか?」

「………」

「“テイジョウテキ”にお使いになるならカードをお作りになると便利ですが」

「………」

「この口座をなんどもお使いになるのなら、カードをお作りになると便利です」

「あ、これだけですからいりません」

“テイジョウテキ”なんて言わないで、どうして最初からこう言わないのだろう。

“定常的”と云われてとっさに分かる人はどのくらいいるのだろうか。


「クレームがありませんから」

大手CD店のバーゲンのカゴのなかにエルビス・プレスリーのDVDを見つけた。

手にとってみると、評判になった1968・NBC TV番組の輸入盤。

「シメタ!市価の三分の一」。

しかし、どこにもリージョンコードが印刷されていない。安く買っても観られなくてはしょう

がない。説明文に手がかりは、と見ると英語ではない。

ない知恵を絞って定冠詞をたよりに文字を追っていくとどうもスペイン語系らしい。

これではお手上げとカウンターへ持っていき、

「これ、リージョンコードがないのですけど日本で観られますか」と聞くと。

「はっ?」という顔をしながら、

「ちょっとお待ちください」と言ってDVDをひねくり回しながら奥へ引っ込んだ。

やがて出てきて言うことには…。

「以前お買い上げになったお客様からクレームがありませんから大丈夫だと思います」

これほど確かな答えはないだろう。


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